ほねこ

Open App

「奇跡をもう一度」

 君に出会えたことは私の人生において最上の幸運であり、不幸でもあった。あの偶然の出会いを、君は運命だ、奇跡だと言った。つまりは偶然と偶然が合わさり、結果として奇跡的に良い方向へと働いたのだ、と。
 それまで私は運命だの奇跡だのというものを信じちゃいなかったけれど。でも、確かにあのことは特別だった。衝撃的とでも言おうか。それによって、私の物の見方もすっかりと変わってしまった。変えられてしまった。世界には常軌を逸したことが起こり得るのだ。私の世界は、突然に広大なものになってしまった。それは喜ばしいことに見えたが、次第に恐ろしさへと変貌した。
 私は、臆病なのだ。それを自覚させた君が憎い。愛しくて、憎くて、堪らない。これが全て夢幻の類であったのだと願いたい。君の存在ごと知らずに、あのままの私でいられたなら、と。今からでもそうなれたのなら、と。君の言う奇跡が再び起こらんことを、請わずにはいられないのだ。

10/3/2023, 6:34:46 AM