NN

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5/28/2024, 11:35:36 AM

『半袖』

「今日暑いね」
「溶けそう」
『それな』
「今日何着てく?」
『半袖着てこ』

OKという音声とともに、可愛い絵柄のスタンプが送られてきた。今日はあいつと遊ぶ。
最近、連絡が取れていなかった。久しぶりにLINEが来たと思ったら「遊ぼ」とだけ書かれた白色の吹き出しが届いた。もちろん普通の人なら急に送られてきたLINEに驚き一息ついてから返事を送るだろう。だが、私は一瞬で判断を決めていた。

地方出身の私とあいつは、学校が同じだった訳では無い。たまたま同じ地域のバスケットボールクラブに所属していたのがきっかけだ。そのバスケットボールクラブで私たちは苦楽を共にした。集合場所は当時から、通いに通いつめたコロッケ屋であった。色んなことを考えながら、私は新幹線に乗った。東京から地元への切符だ。私たち二人の再会を祝うような爽やかな風が吹いていた。


ノースリーブに、ショートパンツ。だらけきった格好でふとテレビをつけた。食べようとしたアイスはダラダラに溶け始めている。

[昨日から、行方不明になっている―さん。警察は再度、情報提供を求めました。]

ははっと笑いながらテレビを消した。隣合った彼女は、私のよく見なれた横顔だった。2人で笑い合える日々は永遠になった。



5/27/2024, 10:05:05 AM

「月に願いを」

ああ、今日も一日がすぎてしまった。

そう考えるようになったのは私が社会のネジとして機能し始めてからだろうか。彩りがあった学生時代は瞬きをするように終え、今では透明な世界だけが私の世界に広がっている。今日は何回人に頭を下げたのだろう。

私はコップに透明な液体を注ぎ、いつの日か買った四角い箱を手に取った。ベランダに出て、中から紙の筒を取り出し火をつける。ジリジリと燃える火は、汚れていく肺と似ている。自分の身体を汚しているのはわかっているのに、私はこの行為が辞められなかった。

やはり、夜は澄み切っていて心地がいい。私はそう思った。すると急に匂いが変わった。煙の匂いだが、私のものとは違う。ふと隣を見ると、同じ行為をしている人間が見て取れた。横顔を見るに、私よりも若い。

『タバコ好きなんですか?』
急にそう話しかけてきた。その姿は美しく、月明かりにはスポットライトになった。

「は、はい。」
『じゃあ、一緒に吸いましょ。』
「いいですね…。」


もう少し話したくなってしまったのは、きっと月が綺麗なせいだ。

『月に願い込めたら、願いって叶うんですかね?』
「叶ったら素敵ですね。」

そんなことを言うから私も願いを込めた―。

5/25/2024, 3:46:26 PM

「降り止まない雨」

昨夜から降り続いている雨に私は頭を抱えた。傘を持ってこなかったため、髪には湿気を帯びていた。
チャイムがなってから20分はたっただろうか。
私は、いるはずの場所に居ない。理由は特にない。
気づいたらここにいた。だが、初めて常識から脱したことに、高揚していた。

多分、あの人のことが忘れられなかったからだ。