「おはよう。おや我がライバルの葵さん、なにか困ってるようね。どうしたの?」
「あ、親友の友子ちゃん。おはよう」
「親友じゃないから」
「友子ちゃんってば天邪鬼なんだから。
実はね、書く習慣っていうアプリで、お題に『逆さま』が出たの。でも何も思い浮かばなくて…」
「確かに、素直で箱入りで、何度騙されても人を疑う事を知らない葵さんには難しいかもね」
「今さり気なくディスらなかった?本当に親友じゃないかもしれない」
「親友じゃないのよ。
だけど大丈夫。私が良いことを教えてあげよう」
「ホントに。助かるよ。やっぱり親友だね」
「違うから。悩み事のせいで、力が発揮できないあなたに勝っても嬉しくないのよ」
(素直じゃないなあ)
「何よその顔。やっぱり教えるのやめようかしら」
「…さすが私のライバル」
「分かればいいのよ」
(チョロいな…)
「それでアイデアというのはね。股のぞきというものよ」
「股のぞき!聞いたことある」
「逆さまになって、股を覗いて景色を見ると、景色の見え方が変わるの。
葵さんはあの名誉あるイグノーベル賞の話題で聞いたことがあるのかもね」
「なるほど。イグノーベルで聞いたのかもしれない」
「それにイグノーベル賞もノーベル賞の一種の逆さまみたいなものだから、そこを広げると良いと思うわ」
「さすが友子ちゃん。完璧ね。でも一つ穴があるわ」
「穴?穴なんてあるかしら」
「うん。締切の夜七時がもうそこに迫ってるの」
「えっ」
「だから、調べる時間が無くて、このまま書くしか無い」
「このまま?」
「そう、このまま。
さっきから逆さまを言ってる友子ちゃんのことを書くよ」
「待って、葵さん。私は逆さまではないわ」
「大丈夫。友子ちゃんはそのままでも面白いから」
「心配してるのはそこではないわ」
「友子ちゃん。私たち親友だよね。だから書いていいよね!」
「…本当に親友じゃないかもしれないわ」
その夜は全く寝付けなかった。
もうすぐ初めての子供が生まれるのだ。
眠れないほど緊張していた。
このままいても仕方がないので、少し気分を変えるため、ベットからから抜け出す。
誰かいるわけでもないが、なんとなく静かに歩いて寝室を出る。
寝室から出て廊下を歩き台所へ行く。
真夜中なので、物音は自分の足音だけ。
草木も眠るとはよく言ったものだ。
お茶を出そうと、冷蔵庫を開ける。
思いの外、喉が渇いていたらしく、水がとても美味しい。
ふと台所の窓から外を見る。
何も映し出さない、真っ暗な闇。
このあたりは田舎なので、こんな夜中には車は通ることはない。
音もせず光もない。
まるで世界に自分だけのようだ。
カタと音がしたので後ろを振り向くと、飼い猫のミケがいた。
物音で起こしたかとも思ったが、よく考えれば夜は彼女のテリトリーである。
おそらく夜のパトロールであろう。
御苦労なことだ。
しかし、私を見るやいなや走ってきて遊びを催促するのだが、ミケはじっと見ているだけだった。
よく見ると、なんだか眠そうに見える。
昼間寝てないのだろうか?
「眠いのか?」
そう聞いても、ミケはこちらを見るだけで何も答えない。
するとミケは私に背を向けて歩き出す。
数歩歩いて、こちらを見る。
ついてこいって事だろう。
ミケの後ろをついて行くが、家の中を歩くばかりで一向に目的地に着かない。
それにいつもは走っていくのに、歩いているだけだ。
しばらく歩いて寝室のドアの前に座る。
開けろってことらしい
ドアを開けると、スルリと部屋の中に入っていき、妻の寝る場所で横になっていた。
そこで気づいた。
ミケは、子供が生まれることを知っているのだ。
だから子供のように走らず、落ち着きのある大人のように歩いていたのだ。
私はミケを優しく撫でる
「そっか。お前お姉ちゃんになるもんな。大人っぽかったぞ」
どうやら緊張しているのは、私だけではないようだ。
「たくさん可愛がろうな」
そう言うと、ミケは眠そうな顔でニャアと鳴いたのだった
今回のお題は夢と現実である
どんなものを書こうか
現実の自分と夢の自分が出会って云々を書いたら面白いのでは?
よし、この路線で行こう
と思っていたのだが、あることに気づいた
これドラクエ6じゃん
ネタバレになるから深くは言わないけど、夢と現実の世界を行き来するゲームである
(気になる人は、漫画かアプリを買うかwikiへ)
好きなゲームで、発売当時かなりやりこんだ
一旦気づくと、もうこれしか出てこない
これから不貞寝して夢の世界に行きます
お疲れ様でした
「さよならは 言わないで」
お見舞いに行った時、君はそう言った。
本当に会えなくなそうだからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
元気になってから学校から帰る時、君はそう言ったね。
また病気をしそうで怖いからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
高校の卒業式の時、君はそう言った。
離れたくないからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
デートのとき、君はそう言った。
一人は寂しいからって、君は泣いていた。
「さよならは 言わないで」
プロポーズのとき、僕は君にそう言った。
もう離さないからって、君は泣きながら笑っていた。
オレの心は光と闇の間で揺れていた。
今、オレの目の前には、財布が落ちている。
もちろん拾って交番に届けるべきなんだろう。
その一方で、この中に入っている金をネコババすれば、生活は楽になる。
自分の中の天使が言う。
―困っている人を助けるべきだ、と。
自分の中の悪魔が言う。
―大丈夫、バレはしない、と。
悪魔はささやく。
―これでいいものを食おうぜ、と。
悪魔はさらに追撃をかける。
―欲しいゲームあるだろ、と。
悪魔はこれでもかと誘惑する。
―よし、じゃあ買い物行こうぜ、と。
さっきから悪魔の押しが強い。
天使も助けるべきだ、としか言わない。
もっと無いのかとも思うが、オレも何も思いつかない。
自分の心は汚れているのだろうか?
違う。
たとえ心は汚れていても問題ではない。
どう生きるか、どう行動するかが問題なのだ
確か、婆ちゃんもそう言ってた。
そうと決まれば話は早い
オレは財布を握りしめ、近くの交番に向かう。
意外にも悪魔は反対しなかった。
そして悪魔はつぶやく。
―まあ、落とし主が美人かもしれないからね、と。
期待してないといえば嘘になるが、そんな都合のいいことはない。
交番に行って遺失物の届け出を書いていると、なんと婆ちゃんがやってきた。。
「あら、その財布。おばあちゃんのものね。拾ってくてありがとう」
そう言って婆ちゃんは、いくつかの確認の後、財布をお巡りさんから受け取る。
一緒に家に帰ったあと、婆ちゃんは財布からお金を取り出して、オレにくれた。
「拾ってくれて、ありがとうね。はい、お小遣いあげるわ」
オレは、渡されたそのお小遣いを、どんな感情で受け取るべきなのか?
オレの心は光と闇の間で揺れていた。