「涙の理由?それを聞きたくて走ってきたの?」
私は呆れる。
走ってきたのは、私のファンだと言って憚らない後輩である。
私のことを何でも知りたいらしい。
こうなると思ったから、見つからないようにしたのに。
「はい、何かあったのなら放おっておけません」
「何でもないわ。ワサビが効いただけよ」
「嘘です。ワサビなんて食べてないですよね」
たしかに適当に言い逃れをしたが、普通追求するかね。
「あのね。それは聞いてほしくないって意味だから」
「分かりますよ。でも先輩のこと知りたいんです」
「‥あんたね、そろそろ怒るわよ」
「先輩、怒った顔も素敵です」
さすがのこれには開いた口が塞がらない。
段々落ち込んだのがバカらしくなってきた。
この子の相手をすると、最後にはいつもそうなる。
この子なりの励ましなのだろうか。
「あー、涙の理由ね」
彼女の目が輝き始める。
「あれ、何だっけ」
「えー、今更なしですよ、それ」
そう言われても、今はもうどうでも良い。
だが彼女は納得しないようだ
その時、悪魔が囁いた。
私のことを知りたいとな
ならば教えてあげよう
「うーん、寿司食べたら思い出せそう」
「ホントですね。そこに回転寿司あるんで入りましょう」
彼女は疑わず、寿司屋に入っていく。
計算通りだ。
今の私の顔はかなり邪悪であろう。
これを見逃すなんて、あいつもまだ未熟だ
涙の理由、教えてやるよ。
私のことも、たくさんな。
最初に言ったはずだ。
わさびが効いたのだと。
今回はただの感想文です。
最近心躍ること。
私事で申し訳ないが、今年の8月に発売されたゲーム、アーマードコア6が浮かんだ。
知らない人に少し説明すると、10年ぶりに新作が発売された難しめのメカアクションゲームである。
アーマードコア(以下ac)というロボットを駆る傭兵とり、acをカスタマイズしながら様々な仕事をこなしていく、というゲーム。
さて実をいうとシリーズの半分もやってなかったりする。
クリアしたのも初代と2だけ。
あと5を途中で諦めた位のもの。
そこまで熱心なファンでもなかったりする。
でも発売のことを知った時、胸が高鳴ってしまった。
まさにココロオドルだ。
このゲームには奇妙な魔力があるのだ。
そしてソフトを手に取り、ゲームの電源を入れた時は、かなり浮かれてたのを覚えている。
まさにココロオドルだ。
(あとで似たような人がいるのを知って、ちょっと安心した)
ゲームは面白さも語りたいが、本題ではないので割愛。
さてゲームクリア後も、けっこう心躍ってたりする。
ネタバレを避けるため、SNSや画像投稿サイト、youtube考察などを覗くのを控えていた。
クリアして、ネタバレ解禁したときもワクワクが止まらなかった。
このゲーム、ファン活動が盛んで色々な妄想や二次創作が見れる。
結構なお祭り騒ぎで、自分もその中にいるのだと言う感覚が心地よい。
書いてて思ったけど、なにかに似てると思ったら、昔の収穫祭っぽい。
農作物の収穫(ac6)に感謝しつつ、俺の育てた大根(妄想)を見ろ、みたいな。
まあ、そんな感じで心が踊る以上に、はしゃいでたのは間違いがない。
見たことない人は一度見てほしい。
興味ない人でもまとめを見て、一瞬笑ってほしい。
その価値はある、というのは言い過ぎか?
一人の物書きとして、こんなに色んな人を巻き込めるのは、エンターテイメントとしてすごいなという感想しか出ない。
自分もこのレベルまで行きたいと、妄想してみたりする。
うまく伝わったかは分からないけれど、読んだ人が少しでも心が踊ってもらえれば幸いである。
ps自己満足の感想文読んでくれてありがとう
広い海にぽつんと浮かぶ島。
そこにたくさんの鳥が集まっていた。
しかし彼らはそこに住んでいる鳥ではない。
彼らは遠い地から飛んできた渡り鳥である。
そんな彼らもずっと飛び続けることはできない。
休息と食事も必要だ。
そのため、あるものは羽を休め、あるものは海の魚を取って食べていた。
この旅は過酷である。
気の遠くなるような距離を飛ばなければいけない。
途中で脱落する仲間たちもいる。
それでも、かれらは旅を辞めない。
なぜそんな事をするのかと問われれば、彼らはこう答えるだろう。
そこには素晴らしい物が溢れているから、と。
そして目的地の方へ見つめるのだ。
もちろん見える距離ではない。
しかし彼らには、はっきりとその光景が見えているのだ。
でなければ、こうも迷いなく旅を進めることはできないだろう。
彼らの様子を見るに、ここを発つのは明日の朝だろう。
また過酷な旅が持っている。
だがまだ旅立ちの時間ではない。
明日に備え、彼らは英気を養う。
これは過酷な旅の束の間の休息なのだ。
「待って」
思わず、去ろうとした彼の手を握る。
やっちまった。
その言葉が頭の中を駆け巡る。
やってしまったことは仕方がないので、振りほどかれないように、力を込めて握る。
振り返り、怒ったような顔で私を見る。
そりゃそうだ。
さっきまで別れ話をしていたのだ。
これ以上何の話があるというのか。
衝動的にとはいえ、引き止めてしまった。
なにか言わなければと思うが、頭が真っ白で何も出てこない。
このままでは、無事に別れることはできない。
別れる?別れる!
その時、別れるという言葉に天啓を得た。
彼の顔を真っ直ぐ見る。
「さよなら」
そう言うと彼は少し困った顔をして、
「さよなら」
と返してくれた。
よくある別れの挨拶。
こうして私と彼は別れた。
そして私の手から、彼の手がスルリと抜ける。
これ以上引き止めてはいけない。
彼には次があるのだから。
「カーット」
監督の声が響く。
その言葉に、現実に引き戻される。
私は周りに聞こえるように声を出す。
「すいません。台本にないことしちゃって‥」
「いいよ。アドリブ良かったし、君のアドリブは有名だからね」
思わず苦笑する。
視界の端に去っていった彼が戻ってくるのが見える。
「びっくりしましたよ。だめかと思いました」
「ごめんね。私、役に入り込んでしまうの」
大丈夫ですと彼は笑う。
「じゃあ、僕この後別の収録あるんでもう行きますね」
頑張ってねと、衝動的に手を差し出す。
また、やっちまったと思ったが、彼は握手に応じてくれた。
彼の素敵な笑顔を見て、握手の手に自然と力がこもる。
仕方ない。
君は私の好みのタイプど真ん中だからね。
やっぱりあの時はああすればよかった。
国を統べる王とはいえ、そう思うことはいくつもある。
たとえワシほどの賢王でさえだ。
特に今回のことは反省している。
勇者の旅立ちの日。
勇者の紋章が出たというから、送り出しをしてやったというのに、あいつ不満そうだちゃもんな。
10goldもやったのに。
やっぱり、不敬で処刑しとけばよかった。
魔王を倒すならばと、我慢してまった。
伝説の勇者だからと調子に乗りやがって。
娘を助けて戻ってきたときも、仲良く手を繋いだりしてた。
娘がどうしてもと言うから、処刑はなしにしてむち打ちですませてやった。
寛大な措置に感謝するどころか、睨みつけてきやがった。
あの顔を怖がって、娘が部屋から出てこなくなったしな。
今思い出しても腹が立つ。
そういえば、あいつがいて良かったこともあったな。
伝説の勇者の武具を探し出したのは褒めてやりたい。
おかげでわしの自慢のコレクションが充実した。
後世の人間はワシを称えるだろう。
だがヤツは勇者魔王連合とか、ふざけたことをして、城を攻撃してきた。
この美しい城に傷をつけるなど万死に値する行為だ。
挙句の果てに民衆を脅し、軍をたぶらかして引き込んだことも許せん。
それらは王の所有物だと言うのに、かすめ取るとは。
ふむ、色々考えてみたがむしろワシのほうが迷惑している。
ワシを悪者呼ばわりするが、むしろ被害者である。
そういうわけで、ワシは無罪であり被害者であり、ワシを処刑することは国の損失である。
この処刑は即刻中止にせよ。
今なら誰にも罪を問わぬ。
いやワシが悪かった。
だから処刑を中止にー