コーヒーが冷めないうちに
目玉焼きは半熟
ウインナーは3本
レタス少しとミニトマトを1個
コーンスープは粉末をゆっくり混ぜる
食パンは5枚切を7分焼いて
ブルーベリージャムとマーガリンは机の上に
目覚ましのアラームはさっき止まったが
2階から物音はしない
もうすぐ次のアラームが鳴る頃だろう
さて今日はコーヒーが冷めないうちに
目を覚ましてくれるだろうか
昨日はすっかり冷めてしまった
一昨日はぬるいと文句を言ってたっけ
早く起きたときは窓際の席でぼんやりと
コーヒーを待っていてくれるが
最近はお目にかかれていない
今日も見れなさそうだ
ではそろそろコーヒーの準備に取り掛かろう
待ってやる義理はない
彼のコーヒーは私のおまけなのだから
【おすそわけ】
パラレルワールド
貴方ときたら上から目線で偉そうで
頭が良いからって色んなこと抱え込んで
物事を難しく考えすぎなんだよ
…優しいから抱え込んじゃうんだろうけど
この世界の俺たちは殺し合って終わったけれど
別の世界でなら普通の友達になれただろうか
俺のほうが年上だったりして
同級生でも楽しそうだ
一緒に学校に行ったりさ、遊びに行ったり
ゲーセンなんて貴方行ったことないでしょ?
もしもあの時、貴方を1人にしなければ
今でも一緒に飲みに行くくらいはできたのかなあ
あの人が死ななければあるいは
でも、この終わりに後悔はしていないよ
貴方もだろ?やりたいようにやった
結局俺たち似たもの同士だったんだろうな
だからこそわかりたくてわかってほしくて
譲れなくてこうなった
貴方に出会わなければとも思った
もっと沢山の別の未来を選べたのに
選べばよかった?馬鹿言えよ
貴方がいたら貴方しか選べないよ
だからほら行こう
貴方にだって俺しかいないんだから
きっといつだろうがどこにいようが
そういうもんなんだよ俺たち
…次は、一緒に星でも見に行けるといいなあ
【いつでもどこでもずっと】
時計の針が重なって
空は真っ暗
星のきらめきは地上の明かりにかき消され
月はのんきにうかんでいる
1秒前とは何も変わらないけれど
今日は昨日になり明日は今日になった
否が応でも刻は進んでいく
あーあ仕事行きたくないなぁ
【24時あるいは0時】
僕と一緒に
「僕と一緒にいこう」
「無理だよ」
私は貴方の優しさを踏みにじることしかできない
一緒にいたってわかりあえない
どっちも頑固で譲らない
永遠の平行線
それが貴方と私だ
「お前は、僕を独りにするのか」
「貴方ならどこでだって受け入れられるでしょ」
誰とでも仲良くできるし誰とでも笑いあえる
私とは違って人の中で生きていける
いや、人の中でしか生きていけない
さみしがりやだもん
「私は独りで生きていける」
偽りなき本音だ
必要なものは全部自分で作れる
人なんぞと関わりたくもない
「だからここでお別れ」
さようなら世界でただ一人の同類
君のさみしさが埋まる日を願っている
「 」
彼の最後の言葉は風にかき消され私には届かなかった
【君さえいればそれでよかったのに】
虹の架け橋
雨上がりに空に架かるアーチ
あれを虹と呼ぶのだとこの地にきて教えてもらった
本で読んだことはあったが
写真を見たことすらなかったましてや実物なんて
「あれ何色に見える?」
隣の男が空を見上げたまま私に問う
顔を上げて色を数える
「5色だときいていだが…4色しかわからないな」
「へぇ、俺は7色って聞いたな、でも頑張っても6色しか見えないや」
「そうなのか」
彼と私では見えるものが違うらしい
産まれのルーツも育った場所も違うのだから
そういうものなのだろう
でも少しさみしい
彼と同じものをることができないなんて
「おい」
頬を掴まれ顔を彼の方に向けられる
「言いたいことがあるんならそんな顔してないで言え」
「え」
「言わなきゃわかんないだろ」
俺と貴方は特に
「…言ってもわからないかもしれない」
「なら、わかるまで話し続けろ」
あ、手を出すのは無しの方向でなんていうから思わず笑ってしまった
【君との架け橋】