真空

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10/31/2025, 4:49:51 AM

そして、

仲睦まじい恋人がいました
薬師の男と治癒士の女
女はどんな傷も病も治すことができました
いつしか聖女と呼ばれるようになりました
聖女はたくさんの人を治しました
自らがボロボロになっても治しました
治して治して
そして、女は死にました
力を使いすぎたのです
人々は女の身体を教会大切に保管しました
男のもとには髪の一房も帰りませんでした

男は絶望しました
愛した人を守れなかった自分を嫌悪し
死してなお女を利用しようとする世界に怒りました
だから世界を滅ぼそうと決めました
たくさん人を殺しました
殺して殺して女が救った人たちを一人残らず殺して
ある日、勇者と名乗る少年が男の前に現れました
そして、男は殺されました
その身体は地の奥深くに埋められました
せかいはへいわになりました
ふたりは二度と会えませんでした
おしまい

【よくあるなはし】

10/4/2025, 3:42:54 PM

今日だけ許して

「出せ」
「…なんのことでしょうか」
「その机の下に隠したものを出せ」
「いや、何も、その」
「出せ」
おずおずと手に持っていたものを机の上に置く
それを取り上げてしげしげと見る男
男はゆっくりとこちらに目を向ける
「健康診断引っかかったのはどこのどいつだ?」
「私です」
「食後のデザートをやめるって言ったのは?」
「わ、わたしです」
「じゃあこれはなんだ?」
「…期間限定さつまいもドーナツです」
「これはテザートだよなあ?」
「いや、そのちがくて、だって芋だしその」
「没収」
「そんな!!」
「自分が1週間前に言ったことくらい守りなさい」
「いやだって期間限定だよ?限定なんだよ!?」
「だーめ」
「今日、今日だけ見逃して!!」
「甘やかすなって言ったのはお前だぞ」
「だって!」
「俺が食べて感想教えてやるからな」
そう言って愛しのドーナツを攫った悪魔はニッコリ笑った


【有言不実行】

10/2/2025, 4:07:34 PM

遠い足音

身体が重たい
筋肉が酷使され悲鳴を上げている
もう今すぐにも寝てしまいたい
そのまま永遠に眠ることになるだろうけども

雷が飛んでくる
避けながら一突きまっすぐ心臓を穿つ
敵の数は減らしているのに一向に終わりが見えない
全く嫌になっちゃうなあ
矢が四方から飛んでくるのを全てはたき落とす
そのまま突っ込んで順番に首を斬る

戦争は数だとはよく言ったものだ
一撃で倒せるがいかんせん終わりが見えない
だんだん飽きてきた
助けにくるとは言われたがいつのなるのやら
負ける気はないがホントに数だけは多い
英雄とはよく言ったものだ
こんな戦場に独り放り出すなんて
素晴らしい信頼だこと
未だ救援の足音は聞こえない
まあ、また独りで終わらせることになるんだろうなあ
そうしてまた祭り上げられる
全くもって嫌になる
そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ
うん、そうだな戦いをさっさと終わらせて
国でも滅ぼすか
それがいいそうしよう
よし!やる気がでてきたぞ!


【滅亡までのカウントダウン】

10/1/2025, 11:02:13 PM

秋の訪れ

焼き芋
大学いも
スイートポテト
栗ご飯
モンブラン
きのこの炊き込みご飯
アップルパイ
タルトタタン
塩おにぎり

何から食べよう?
君と一緒ならどこへでも


【食欲の秋】

10/1/2025, 4:17:25 AM

旅は続く

この身体が朽ち果てるまで
私の旅は続く
空の果ても地の果ても世界の果ても
全て見届けるそのために
見たこと聞いたこと感じたこと
全部抱えて歩き続ける
君がくれたこの命をムダにしないために

そうして眠りについたあとに
また君に会えた時にはおかえりと言ってほしい

【帰る場所】

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