そして、
仲睦まじい恋人がいました
薬師の男と治癒士の女
女はどんな傷も病も治すことができました
いつしか聖女と呼ばれるようになりました
聖女はたくさんの人を治しました
自らがボロボロになっても治しました
治して治して
そして、女は死にました
力を使いすぎたのです
人々は女の身体を教会大切に保管しました
男のもとには髪の一房も帰りませんでした
男は絶望しました
愛した人を守れなかった自分を嫌悪し
死してなお女を利用しようとする世界に怒りました
だから世界を滅ぼそうと決めました
たくさん人を殺しました
殺して殺して女が救った人たちを一人残らず殺して
ある日、勇者と名乗る少年が男の前に現れました
そして、男は殺されました
その身体は地の奥深くに埋められました
せかいはへいわになりました
ふたりは二度と会えませんでした
おしまい
【よくあるなはし】
今日だけ許して
「出せ」
「…なんのことでしょうか」
「その机の下に隠したものを出せ」
「いや、何も、その」
「出せ」
おずおずと手に持っていたものを机の上に置く
それを取り上げてしげしげと見る男
男はゆっくりとこちらに目を向ける
「健康診断引っかかったのはどこのどいつだ?」
「私です」
「食後のデザートをやめるって言ったのは?」
「わ、わたしです」
「じゃあこれはなんだ?」
「…期間限定さつまいもドーナツです」
「これはテザートだよなあ?」
「いや、そのちがくて、だって芋だしその」
「没収」
「そんな!!」
「自分が1週間前に言ったことくらい守りなさい」
「いやだって期間限定だよ?限定なんだよ!?」
「だーめ」
「今日、今日だけ見逃して!!」
「甘やかすなって言ったのはお前だぞ」
「だって!」
「俺が食べて感想教えてやるからな」
そう言って愛しのドーナツを攫った悪魔はニッコリ笑った
【有言不実行】
遠い足音
身体が重たい
筋肉が酷使され悲鳴を上げている
もう今すぐにも寝てしまいたい
そのまま永遠に眠ることになるだろうけども
雷が飛んでくる
避けながら一突きまっすぐ心臓を穿つ
敵の数は減らしているのに一向に終わりが見えない
全く嫌になっちゃうなあ
矢が四方から飛んでくるのを全てはたき落とす
そのまま突っ込んで順番に首を斬る
戦争は数だとはよく言ったものだ
一撃で倒せるがいかんせん終わりが見えない
だんだん飽きてきた
助けにくるとは言われたがいつのなるのやら
負ける気はないがホントに数だけは多い
英雄とはよく言ったものだ
こんな戦場に独り放り出すなんて
素晴らしい信頼だこと
未だ救援の足音は聞こえない
まあ、また独りで終わらせることになるんだろうなあ
そうしてまた祭り上げられる
全くもって嫌になる
そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ
うん、そうだな戦いをさっさと終わらせて
国でも滅ぼすか
それがいいそうしよう
よし!やる気がでてきたぞ!
【滅亡までのカウントダウン】
秋の訪れ
焼き芋
大学いも
スイートポテト
栗ご飯
モンブラン
きのこの炊き込みご飯
アップルパイ
タルトタタン
塩おにぎり
何から食べよう?
君と一緒ならどこへでも
【食欲の秋】
旅は続く
この身体が朽ち果てるまで
私の旅は続く
空の果ても地の果ても世界の果ても
全て見届けるそのために
見たこと聞いたこと感じたこと
全部抱えて歩き続ける
君がくれたこの命をムダにしないために
そうして眠りについたあとに
また君に会えた時にはおかえりと言ってほしい
【帰る場所】