僕と一緒に
「僕と一緒にいこう」
「無理だよ」
私は貴方の優しさを踏みにじることしかできない
一緒にいたってわかりあえない
どっちも頑固で譲らない
永遠の平行線
それが貴方と私だ
「お前は、僕を独りにするのか」
「貴方ならどこでだって受け入れられるでしょ」
誰とでも仲良くできるし誰とでも笑いあえる
私とは違って人の中で生きていける
いや、人の中でしか生きていけない
さみしがりやだもん
「私は独りで生きていける」
偽りなき本音だ
必要なものは全部自分で作れる
人なんぞと関わりたくもない
「だからここでお別れ」
さようなら世界でただ一人の同類
君のさみしさが埋まる日を願っている
「 」
彼の最後の言葉は風にかき消され私には届かなかった
【君さえいればそれでよかったのに】
虹の架け橋
雨上がりに空に架かるアーチ
あれを虹と呼ぶのだとこの地にきて教えてもらった
本で読んだことはあったが
写真を見たことすらなかったましてや実物なんて
「あれ何色に見える?」
隣の男が空を見上げたまま私に問う
顔を上げて色を数える
「5色だときいていだが…4色しかわからないな」
「へぇ、俺は7色って聞いたな、でも頑張っても6色しか見えないや」
「そうなのか」
彼と私では見えるものが違うらしい
産まれのルーツも育った場所も違うのだから
そういうものなのだろう
でも少しさみしい
彼と同じものをることができないなんて
「おい」
頬を掴まれ顔を彼の方に向けられる
「言いたいことがあるんならそんな顔してないで言え」
「え」
「言わなきゃわかんないだろ」
俺と貴方は特に
「…言ってもわからないかもしれない」
「なら、わかるまで話し続けろ」
あ、手を出すのは無しの方向でなんていうから思わず笑ってしまった
【君との架け橋】
既読がつかないメッセージ
彼に毎日のようにメッセージを送る
出勤途中に見かけたコスモス
美味しかったラーメン
もうすぐ封切りされる映画
気になっている最近できたカフェ
晩御飯のメニュー
楽しいや嬉しいを届けたくてメッセージを送る
でも既読は一度もついたことない
彼の友人はアイツ返信早いよなあなんていってた
私には一度も返信はきたことはない
返信は
メッセージを送るとかかってくる電話
君の声で教えてなんて言ってくる
困らせようと勤務時間にメッセージを送ったが
いつだってすぐに電話がきた
迷惑をかけたいわけではないので
最近は夜にしか送らないことにしている
繁忙期にメッセージを送るのをやめていたときは
3日目の夜に家の前にいた
家は3時間くらい離れている
顔を見せたらそのまま帰っていった
全くマメな彼氏というのは困ったものだ
なんて言ったら友人は引きつった顔で
怖っと呟いた
失礼な
【マメな男】
もしも世界が終わるなら
「もしも世界が終わるなら?」
「いやだ」
「答えになってないよ」
「いやだ」
「もしもだって言ってるじゃん」
「い・や・だ」
「人の話をきいてよ」
何が言いたいか分かってるくせに
聞かないふりなんて酷い人
「死ぬかもしれないよ?」
「死なない」
「その自信はどこから来るんだい」
「ただの事実だ」
「根拠のない自信は事実とは言わないんだよ」
「俺は死なないし世界は終わらない」
「…そんなのわかんないじゃん」
「さっさと帰ってきてお前は俺と一緒に新作パンケーキを食べに行くんだ」
「ふわトロマウンテンクリーム三段積みフルーツ盛り?」
「アイスタワーをつけてスペシャルにする」
「カロリーが怖いやつだぁ」
「これ以上グダグダ言うならお前の分はアイスタワー抜きにするぞ」
「…それはヤダなぁ」
せっかく行くならスペシャルが食べたいよ
だからしょうがないからついていってあげる
世界を救う旅にもパンケーキにも
【未来の約束】
答えは、まだ
「私はお前が好きだ」
あの日は雪の深い静かな夜だった
コイどころかユウジョウもシンライも
人との関わり方を知らなかった私に
差し出されたあの人の言葉
言葉がわかるが故に
人も獣も魔物も
姿がどうであれ敵ならば全て同じと
立ち向かってくるもの全てを切り捨てていた
子の前で親を斬った
友の亡骸にすがりつく男を串刺しにした
依頼さえあればなんだってやった
化け物と呼ばれた
それを気にしたことはなかった
あの人は血まみれの私の手を両手で包みこんで
冬の透き通るような青空の瞳をまっすぐに私に向けた
「私はお前が好きだ」
「お前のこの手は私と私の友人を救ってくれた手だ」
「狩りも荷物の配達も子どもの探し物を手伝うのも全てお前は同じように真摯に取り組む」
「誰であれ何であれ同じように向き合うその姿に私は惹かれたのだ」
「だから自分のことを化け物なんて呼ばないでくれ」
「お前は私の大切な友なのだから」
あの日もらった言葉の答えは、まだ見つからない
でもあの人に恥じない生き方をしたいとそう思った
【指針】