先生 「この間、皆に『未来について』という作文の宿題を出しましたね
その中で、皆にも聞いて貰いたい作品を先生が選びました
じゃあ、尾崎君、君の作品を皆に読んで聞かせてあげて下さい」
尾崎 「えっ?僕の? あ、はい」
「僕のおばちゃんは認知症という病気です
僕がお見舞いに行っても、僕のことが誰だか分かりません
僕が小さい頃は、おばちゃんが沢山遊んでくれました 沢山お出かけもしました
僕が小さい頃の写真を見せると、「これはね、私の孫なのよ 和樹っていうの とても可愛い子なのよ」と僕に説明してくれます
でも、僕が和樹だとは分かりません
僕は将来お医者さんになって、認知症の薬を作ります
だから未来に行って、僕の作った認知症の薬を持って帰っておばちゃんに飲んでもらいます
そして、元気なった未来のおばちゃんにまた会いに行きます」
先生 「はい、ありがとう!
大好きなおばちゃんを想う尾崎くんの優しさが沢山詰まった良い作品でしたね
尾崎くんの願いが叶う未来が来ることを先生も楽しみにしていますよ」
『未来』
本を選ぼうとする時、それが本屋であってもネット上であっても
「私を読んで」
と、アピールしてくる
それが作者によるものであったり、題名であったり、背表紙の寸評や表紙のデサインであったりとアピールポイントはその時によって違う
どれどれ、今回はこれかと選び上げ、実際に読み進めるかは初めの1ページで決める
「これだ!」と実際に決まる本は、読み初めて早ければものの数行で「読んでいる」ことを忘れてしまう
小説であれば、目の前には情景が広がり始める
登場人物のイメージもムクムクと湧き始め、すでに私がその登場人物を動かし始めてしまう
だいたい1ページ目でここまで没入出来れば、あとは私が我に帰るまでその本の力が私をどんどん中へ中へと誘ってくれる
反対に、1ページ読んでも周りの音が気になったり、一向にイメージが湧いて来ないものは、そこで諦める
今は「その本の時」ではないからだ
でも、その本が1年後にピタッと決まることもある
まさに出会いのタイミングなのだ
だから、○○という本が好き!というよりは、読みたいと思った時に「読んで」とアピールしてくる本が、その時夢中にさせてくれる本、好きになる本になることが多い
人も本も、タイミングが大事
『好きな本』
海が青いのは、空が映っているからだと聞いたことがある
空があいまいなのは、今の混沌とした世の中を映しているのだろうか…
黒でもなく、白でもなく
グレーのままにしておきたい
そんな日もある
そんな気分の日は
どっちつかずの あいまいな空 に救われる気がする
『あいまいな空』
数年前、近所の神社で毎年恒例の「あじさい祭」で紫陽花の鉢をひとつ買った
私の大好きなネモフィラを思わせる爽やかなブルーが一目で気に入った
翌日私がリビングで寛ぐ時に一番に目につく庭の一角にそれを植えた
一瞬で、いつもの庭に優しさと気品が備わった気がした
それからはその紫陽花に「今日もキレイね!」とか「あなたには雨が似合うわね」などと毎日声をかけて愛でた
花の時期が終わった後も、また来年キレイに咲かせてね、と心を込めて世話をした
紫陽花もその思いに応えるかのように、どんどんと株を増やし、今や庭は「紫陽花の庭」とご近所からも呼ばれている
今年、あの鉢を買って以来初めてまた「あじさい祭り」を訪れた
青も良いけれど、今度はピンクの華やかさもたまにはいいわね
と、どちらかと言えば青寄りの上品なピンク色の鉢を買った
早速翌朝青の群れの中に仲間入りさせた
思った通り、まさに紅一点という感じでピンクの華やかさが際立ち、庭が一気に華やいだ
新入りのその子に「華子」と名付け、殊の外目をかけた
それから1週間経った日の朝、庭を見て「ひぁ!」と悲鳴ともつかない声を上げてしまった
何と、庭に広がっていたネモフィラ色の紫陽花たちがすべて「華子」色に変わっていたのだ
あまりの驚きに慌てて庭に駆け出ると、紫陽花たちの声が聞こえてきた
「あんなに私たちをキレイキレイと愛でてくれていたのに、ピンク色の子が来た途端に貴女ったら名前まで付けて可愛い、可愛いと
私たちはまるで「華子」」の引き立て役みたいになってしまったわ」
そして
「あなたの移り気が許せなかったの」
と…
あぁ、何てこと!
そんなつもりはまったく無かったのに…
「あなたたちのことは変わらず愛しているわ」
と申し訳ない気持ちで話しかけたが、もう遅かった
紫陽花の花言葉は「移り気」
これは紫陽花自身が色を変化させることを意味するものだと思っていたけれど…
私の移り気も許せなかったのね…
紫陽花たちの嫉妬心は私への愛の深さの現れなのよね
私がかけてきた愛情の深さがそうさせたのよね
今年もまた、こんな愛しい紫陽花たちが今一番美しく咲く季節がやってきている
『あじさい』
A 「食べ物にいろいろ好き嫌いがある人って、人の好き嫌いも激しいらしいよ」
B 「へぇ~、そうなの?」
A 「食べ物の好き嫌いって、見た目とか臭いとかがダメ!って食わず嫌いが結構多いらしいのよ」
B 「あ~、分かるぅ」
A 「そういう人って人に対しても見た目の第一印象とか、少し話しただけでダメ、合わない!って先入観でわりと簡単に排除する傾向があるんだって」
B 「私も好き嫌い多いから耳が痛いなぁ…」
A 「反対に好き嫌い無い人は、人に対してもおおらかで寛容なんだって
嫌な面があっても良い面にも目がいくから相手の人を多面的に見られるみたいよ
柔軟性があるのね」
B 「思い当たることあり過ぎだわぁ」
A 「好き嫌いのある人は拘りが強くて視野が狭くなっちゃうのかも(笑)」
B 「ごもっとも過ぎて何も言えない(笑)
食べ物の好き嫌いを克服したら、苦手な人も減るかなぁ?」
A 「まずは納豆あたりからどう?」
B 「うわっ!いきなりハードル高っ!
でも納豆克服出来たら、かなりクセ強めの人とも上手くやれるようになるかもね(笑)」
A 「なる、なる!(笑)」
『好き嫌い』