『子供のままで』
大きな声では言えないが、
20歳になった今でも、ブランコに乗るのは楽しい。
15歳の頃でも、おもちゃで遊ぶのは楽しかった。
10歳の頃は大人になんてなりたくなかった。
5歳はほんとに子供だった。
いつまでも子どものようにいたいけど、
いつまでも未熟なままではだめなんだな。
母の日、なにもしてない。
親の偉大さに気付けるほど、まだ大人じゃないみたい。
ごめんなさい。
『愛を叫ぶ。』
俺はごく普通の大学生だ。
大学生活の中で、同じ学科の女の子と仲良くなった。
最初は複数人で遊んで、
だんだん2人で遊んだりして、
なかなか踏み出せなかったけど数ヶ月してから
告白して付き合った。
2人でいろんなところに行った。
通話もしたし、散歩もしたし、
定期試験前は一緒にテスト勉強もした。
付き合ってから数ヶ月が経った頃。
少しずつ俺は彼女への不満を抱えるようになっていった。
でも、言うほどのことじゃない。
小さいことすぎて、なにが嫌だったのかすらすぐに忘れてしまった。
忘れてしまうのに、なんとなく嫌悪感だけは残っていた。
それでも、彼女にはなにも伝えることができず時間が経っていった。
突然。限界はきた。
俺はもともと人間関係がうまくいかなくなると、
自分のSNSのアカウントを消して逃げたくなる人間だった。
そんな様子をみて彼女はとても心配していた。
さらに、俺はやる気があるときと無いときの差が激しく、
その点もよく心配され、病院を勧められるほどだった。
結論から言えば、俺は、逃げた。
SNSで突然彼女に別れを告げ、ブロックした。
自分で切っておいてこんな風に思うのはおかしいかもしれないが、しばらく俺は失恋に落ち込んだ。
嫌悪感から脱せたスッキリとした気持ちと、
好きな人との関係を自ら絶った寂しさの矛盾に
ひどく苛まれた。
いつもの病み期よりも長い気がした。
別れてから数ヶ月。
私はまだ、心配してるよ。
君は、ちゃんと前を向けてるのかな。
関係を切られても、好きだったよ。
嫌なところ、言ってくれれば直すのに。
君の周りには君を大切に思ってくれる人が
いつだっているのにね。
私だってその一人だった。
周りにいる、君を大切にしてくれる人を
これからはちゃんと大事にしてあげてね。
私はまだ前を向けていないのかもしれない。
こんな所に君の気持ちを勝手に考えて書いてしまうほど、
大好きだった。傷ついた。
君のためにいろんなことを考えて、
いろんなことしてあげたつもりだった。
勝手な自己犠牲。だけどこれはきっと
きっと、愛だった。
もう会わないけど。元気で、さようなら。
『モンシロチョウ』
小学生の時、理科の授業で習って以来聞く名前だ。
教室の後ろ、ロッカーの上、モンシロチョウの卵が虫かごに入れられ、観察できるように展示されていた。
モンシロチョウのたまごのようすを書いてみましょう。
「黄色っぽい」
「すごく小さい」
「白っぽい」
「お米より小さい」
「表面がつぶつぶしている」
表面がつぶつぶしている。
なぜかそこだけ鮮明に覚えている。
高校生になって、僕は獣医師を目指していた。
受験生の冬、追い込みの時期でかなり精神的にもきつい。
でも、生物の勉強だけは癒やしだった。
数学の勉強を一段落させ、生物の勉強にとりかかる。
「卵割」
「全割」
「盤割」
「表割」
表割。
その言葉の隣には、昆虫の卵の卵割の様式が描かれている。
表割。
あのとき見た、モンシロチョウの卵。
表面のつぶつぶ。
遠くなりかけていた記憶が、結びついて
鮮明にあの教室を思い出す。
受験とはおそろしい。
先の見えない不安感と過去のあたたかい記憶がぶつかって
涙が止まらない。
『忘れられない、いつまでも』
苦しかったことは頭に残り、
楽しかったことは心に残るという。
自分にも、頭に強く残る苦しい思い出があって、
そのトラウマに苦しめられて寝られない日があった。
毎日泣いて悔しさに押しつぶされて、
自分を傷つけるような言葉を使って責めて、
それでもどうしても解決できない現実に
打ちひしがれていた。
今はもう、
その記憶に苦しめられても過去も変わらないと思えるし、
そのトラウマに対して
自分が諦める力を身に着けたように思える。
つらい出来事に耳を傾けて幸せだけを追い求めるより、
心に残っている、
なんだったかはわからずとも残る楽しかった気持ち、
嬉しい気持ち、優しい気持ちに耳を傾け、
周りに蒔いていきたい。
たとえなにかが咲かずとも、
蒔いた種が雑草を生やすものであっても、
緑があるだけ癒しになるだろ、
高望みしない、一歩一歩。