三日月って何よりもまず形に特徴があると思うんだけど、あの月を見て三日月って名前にしたのが面白いよね。ぜんぜん形は関係ない。
三日月って、新月から3日目の月ってことでしょ?
世界の三日月をあらわす言葉をちょっと調べてみたんだけど
ヨーロッパは「増える。成長する」って意味のラテン語「crescere」から派生してるものが多い。
音楽用語のクレシェンドってやつも元は一緒だね。
中国語とかドイツ語とかフィンランド語とかは「牙」とか「鎌」から名付けられてて
形から入っていったんだなと思えるんだけど、
月齢からだったり、増減の経過から名付けたりするってことは
それだけ天体の様子を長時間継続して注意深く観察してたんだなって分かる。
実は言い出さなかっただけで、もしくは文字の無い時代だから現代まで気づかれなかっただけで
月の運行のシステムや、地球がグルグル動いてるってことに
観察の末、気づいてた人も古代いたかもしれないよね。
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【37】三日月
パンパカパーン!
色とりどりの紙吹雪が舞い散って、満面の笑みを貼り付けた男が歓声をあげた。
「わーおっ、おめでとうこざいます!」
驚いた俺はすくみあがって笑顔を見上げた。
笑顔が笑顔で言う。
「おめでとうございます、正解ですよ!いや~、素晴らしいですね!」
「な、なんですか?」
男は派手な法被を着て、「めで鯛」と書かれたうちわを掲げている。
「大人の怪談を駆け上がる青少年へ出題する、“逃げても間違ってもハイさよ~ならクイズ!”ですよ。
正解のあなたへの賞品はこちら!どん!なんと!次の問題の解答権です!」
「えっ?えっ?」
「問題、読み上げますよ~。
次のふたつのうち、間違っているのはどちらでしょ〜か!」
男は奇妙な抑揚をつけて出題した。
①殺人は神が始めた。
②自分は殺人犯だ。
「さあ、お答えください!」
「ちょ、ちょっと待って!なんで神様か自分か二者択一で罪人を選ばないといけないんすか? どっちも間違いな設問でしょ!?」
「そんなことはありませんし、そんなことは気にする必要ないじゃないですか。あなたはご自分が間違いなく間違いだと思える正解を答えればいいんですから。
神が本当は何をしたかなんてあなたは知りようがないんだし、自分が信じる正解をお答えください」
「え、、まぁ、それはそうだけど、、。
じゃあ、間違っているのは、、②番」
「パンパカパーン!」
また紙ふぶきが舞った。法被男が「めで鯛」を振る。
「正解です!①番の『殺人は神が始めた』は正しかったのです!」
「いや、そんなことは言ってないんですよ?」
「正解者には次の解答権を!では問題です」
「もういいですよ!」
「いやいやそう言わずに。
次のふたつのうち、間違っているのはどちらでしょ〜か!」
奇妙な抑揚。
①私の父親は殺人犯だ。
②自分は殺人犯だ。
「さあ、どっち?」
「なんですかその問題は! うちの親は殺人犯なんかじゃないですよ!」
「ではあなたが殺人犯?」
「どちらも違います!」
「でも、先程と同じ論理であなたは自分以外の人が本当は何をしたかなんて分からない筈ですよ? 分かるのは自分のことだけ」
「バカバカしい!帰ります!」
「あら? やめるなんて事が出来ると思いますか? これは大人の怪談を駆け上がる青少年へ出題する、“逃げても間違ってもハイさよ~ならクイズ!”ですよ?
大人になることの恐怖を学ぶべき青少年は避けて通れないクイズなのです。
拒否権は無し、間違ったら排除される大人の世界を、ここで身を持って経験しなければなりません」
「……大人の世界ってエグいですね。。でも家族を重罪人にするわけにはいかないので」
「ですがこのクイズ、二択のうち必ずどちらかに間違いがあるのです。
あなたはお父様を本当に信じられますか?
もしくは、知らないうちに犯したかもしれない自分の罪をはっきり否定できますか?」
「また新たに恐い選択肢をぶっ込んできましたね。。
僕が無意識に誰かを殺したとでも言うんですか?」
「あなたがくしゃみしたせいで、風が吹いて桶屋が儲かって誰かが死んだかもしれません。自分の影響力なんて自分自身ではよく分からないもんですからねぇ」
「いい加減にしてください」
パンパカパーン!
盛大な音がして色とりどりの花吹雪が舞う。
不気味なクイズ会場を後にして俺は考える。
あの怪談にいつから参加していたんだろう。大人の階段登り始めた時からか? いつから登り始めてたんだ? いつ登り終わるんだ?
あの二択たちの正解はどこなんだろう。
父親は人を殺してないだろうか。俺は人を殺してないだろうか。神様は人殺しの先駆者か?
俺以外のことは何も分からないし、実は俺のことだって信用ならない。
今日はクイズを降りられたけど、大人の怪談は降りられないのか。踏み外したら地獄だけど、正解し続けるのも地獄だな。
「あれは閻魔の御前です」
めで鯛うちわが翻る。
成人式の晴れ姿。
人の数だけ色がある。
紙ふぶきが舞っている。
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【36】色とりどり
「雪」って綺麗な字なのに
ずっと見てるとサルの顔に見えてくるんだ。
雨冠がちょうど食い込みすぎた富士額を形作っていて
転々がしょぼついた目。
「ヨ」がタラコ唇で。
ちょっと浜ちゃんの似顔絵に見えなくもない。
粉雪、粒雪、綿雪、粗目雪、
水雪、堅雪、春待つ氷雪、、
全部サルが突っ込み入れてるように見えるね。
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【35】雪。または津軽恋女。
虚ろな目をして嘘が行く
ただひとつ、君と一緒に、君と一緒に、
それだけを唱えながらここまで来たけど
キリリと冷えきった麒麟がなくよ
いつだって一個捨て、二個捨て、
持って行けるものなんて何にもないんだ
汗をかきながら空を掻く
我を忘れて、嘘を描く
流しきってしまったホントの恋に
すがり付いても 泥まみれ
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【34】君と一緒に
したいことを自分の裁量でできるのはけっこう幸せ。
何かをすることもやめることもどれくらいするかも自分で決められるのは精神安定の要。
風景を見回した時に綺麗だなって思える時も幸せ。たまに何気ない景色が感動するくらい美しく見えるときがあって、もうすぐ自分死ぬのかな?って不安になるけど、まぁ、そんなことはないだろ。幸せ。
自分の大切な人が笑ってたら幸せ。
時々先回りしてその人が乗り越えるべき障害を排除したくなるけど、そんなことはしちゃダメで、あるがまま頑張っててそれで笑ってくれてると幸せ。
自分の幸福感ばかり、目先の幸福感ばかり優先してると、幸福でなくなるのは分かってる。
ドーパミン、セロトニン、エンドルフィン、、ご利用は計画的に。
飼いならして乗りこなすのが幸福なのかも。
どこかにあるはずだと、幻のような幸福を探して渇望して餓えてる人もいるし。
外に探しに出かけても見つからないって昔から皆言ってるしね。
青い鳥はずっとあなたのそばにいたのでしたって。
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【33】幸せとは