【夏の匂い】
登校中の湿度高めの生臭い空気の匂い。
学校の付けたてクーラーのカビっぽい匂い。
体育後の汗と制汗剤の混ざった教室の匂い。
虫除けスプレーのツンとした匂い。
夏は嫌な匂いが多い。
けど
放課後、皆んなで寄った海の潮の匂い。
この匂いだけはなんか好きなんだよね。
そんな思い出のお話。
【カーテン】
「結婚式にはやっぱりドレスよね」
「真っ白い綺麗なウエディングドレス」
『着てみたいの?』
「着せてくれるんでしょ?」
『…もちろん』
私がそう言うと、彼女はふふっと笑った。
正直、確証は無かった。
この世の中が、私たちの事を受け入れてくれるのか。
白いレースのカーテンに身を包む彼女の姿が、
私には恋しくて痛くてたまらなかった。
そんな2人のお話。
【青く深く】
「好きだったよ…」
君のその言葉を聞き、僕はこう言った。
「どう…して…なんで君が…」
僕は笑顔で倒れている君を見つめた
君の体は青い水膨れでいっぱいだ
「なんか…体がおかしいんだけど」
「どういう事…?」
「え…」
僕がそう言ったら、君がバタンッと倒れてた
「ちょうど効いてきた…」
「あの飲み物に…危ない薬…混ぜちゃった…」
君の顔が少し歪んでいた
僕の異様な雰囲気を察していたのか
「どうしたの…?」
「…」
「ねぇ」
今の僕の顔は酷くて、きっと誰にも見せられないだろう。
心臓がバクバクして…興奮していた…
はぁ…はぁ…
キッチンへ行き、軽く息を整える…
そして僕は走って
君の家の玄関の扉を開けた
上から読むのと下から読むので
話の内容が少し変わると思います。
そんなお話です。
【夏の気配】
「ほんとあっついね…」
隣を歩く君は、襟を掴んでパタパタさせている。
汗で少しシャツが肌に張り付いている。
僕は静かに息を呑む。
『自販機あるけど、なんか飲み物買う?』
「え、あり!!何があるかな〜」
駆け足で探しに行く君を追いかける。
「ねね、これ賭けてじゃんけんしようよ」
カルピスを指差しながら君は言う。
『別に…言ったら奢ってあげるのに』
「もー違う!こういうのは勝負するからいいの」
「ほら!喉乾いたから早くしよ!」
迫力ある君の押しに
はいはい、と呆れ顔で応じるしか無かった。
けど、こういうのも悪くない。
そんな笑顔の2人のお話。
【まだ見ぬ世界へ!】
「あ、ほら!また流れた!」
「…ねぇ、ちゃんと見てよー」
『…ん?あぁ、わーきれいだねー』
「もっとちゃんと見て!とっても綺麗だから!」
『…お前さ、なんでそんなに星が好きなの?』
「んー…未知数だからかな」
「星というか宇宙が好きなんだよね」
「喋ってる今も宇宙は広がり続けてて」
「人類がどれだけ探索しても全てが分かる事は無い」
「不思議が永遠に続くってさ」
「すっっごくワクワクしない??」
『…ふーん』
そんな宇宙に憧れる友達のお話。