【最後の声】
「行ってきまーす」
『行ってらっしゃい』
それが、息子との最後の会話だった。
信号無視の車との衝突だった。
私にはどうしようもない死因だけど
家を出る時間を少しでもずらしていれば…と
自分を責め立てる日々。
ああ、息子に寂しい思いをさせちゃった。
ごめんね、お母さんを許して欲しい。
そんな死んだ母のお話。
【小さな愛】
私は気づいてる、君がいつもしてくれてる事。
1つの肉まんを2人で分けるとき
ちょっと大きい方を私にくれる事。
エスカレーターに乗るとき
私の後ろに必ず立ってくれる事。
ショッピングモールを歩いているとき
私が欲しいなって呟いた物をこそっとメモしてる事。
元気がないとき
何も言わずにアイスを目の前に置いてくれる事。
そんな小さな愛が、
私の気持ちをこんなに大きくしたんだなって。
そんな事を感じる女のお話。
【空はこんなにも】
「疲れた…まじ顧問のやつ、話なげえっつーの」
『ほんとそれな。おかげで俺らが鍵閉め当番やし』
「まじ部室あっちーな」
『それなーコンビニ行ってなんか食おーぜ』
「じゃん負けでアイス奢りな」
『えーぞ。ハーゲンダッツ奢らしたるわ」
「上等」
そんな事を話しながら俺達は部室の扉を開けた。
「うっわ、眩し、空あっか」
「え、今何時?」
『えっとーあと10分ぐらいで7時』
「えー7時やのにこんな明るいんや」
『まぁもう夏やけんなー、早いもんやな』
そんな部活帰りのお話。
【子供の頃の夢】
「あれ、もうこんな時期なんだ」
3割引の惣菜を片手に、俺は足を止めた。
会社の帰り、スーパーの中でふと目に止まった笹。
そこには沢山の短冊が吊るされていた。
[健康で元気に過ごせますように]
[彼氏とずっと仲良く出来ますように]
[大学受かりますように]
そんな願い事の中、
[ゆにこーんにのりたい]
そんな可愛い短冊に、ふふっと口元が緩む。
せっかくだし俺も書いてみるか。
そう思い、ペンを手に取ったが思い浮かばない。
ありきたりな願いばかりで、独創性もクソも無い。
これが、大人になるってことなのか。
そんな事を感じた男のお話。
【どこにも行かないで】★
私のこと、好きなんでしょ?
じゃあなんで離れてくの。
貴方からアプローチしてきて、
私をその気にさせて、好きにさせて。
私には貴方しか居ないのに。
そうやって今回も勝手に決めて。
私を好きにさせたんなら、
最後までちゃんと好きでいて…隣にいてよ…。
そんな一方的なお話。