【雨音に包まれて】
「あー、もう6月やもんなー」
『梅雨来たな』
「ややなー」
私は湿気でクルクルになった髪をとかす。
「せっかくアイロンで真っ直ぐにしたのに…」
『さすが天パ』
「うっさ」
少し濡れた靴下が、余計に不快感を与えてくる。
『ちょ、制服で水たまりん中、飛び込んでみたくね?』
「…あんた何言ってんの」
『えー、うちらJKだよ?死のこの言わずにさ!』
「あ!ちょ…!!」
友達に引っ張られ、大雨の中飛び出す。
『あははは!つめてー!!』
「お前ほんまにバカやって!!」
『えーー!?なんて!?聞こえなーーーい!!』
雨音がうるさくて、声がよく聞こえない。
けどなんか、笑えてくる。
そんな雨の日のお話。
【美しい】
「いいなぁ…」
私は今日も教室の隅からあの子を見ている。
美人で、性格も良くて、頭も良い。
休み時間になれば、男女問わず皆んなが寄ってくる。
窓の外を見ながら呟く。
「私も綺麗になりたい」
『変わらなくて良いと思うけど』
「ひゃ!!」
変な声が出てしまった。
え、あの子が私に、話かけてきた、
「か、変わらなくて…って」
『最近、私とよく目が合うでしょう?』
『その時いつも思うの』
『貴方の目や髪の色、
光に当たってとっても綺麗だなって』
誰しもが誰かに憧れている。
そんなお話。
【どうしてこの世界は】
私の世界は暗闇が広がっている。
人間としての機能で使えるのは
聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
私は目が見えない。
この事を聞いた人は、皆口を揃えて
「可哀想」と言う。
この事を聞いた人は、皆揃って
「助けになるから」と言う。
私は普通の人より可哀想な存在らしい。
普通の人に助けてもらわなきゃ何も出来ないみたい。
そんな自己暗示を他人から擦り込まれる日々。
この世界は私にとって、
あまりにも窮屈だった。
そんな思いを持つ子のお話。
【君と歩いた道】★
放課後、用事があった私を
彼はいつも教室で待ってくれていた。
電車があるからそろそろ帰ろう。と、
皆んなが荷物を持ち始める中
「もうちょっとだけ居たい」
彼は私にだけそう呟く。
結局教室に2人だけ残って、
7.8時ぐらいまで沢山話して、
暗い線路沿いの道を、手を繋いで歩く。
寒い日はポケットの中で繋いだり、
誰も見えないところでキスをしたり。
この道は思い出が多すぎて
当分1人では歩けないなぁ。
そんなあの頃に戻りたい子のお話。
【夢見る少女のように】
大人になったら、おっきいお城に住む!
可愛いピンクのお部屋にして、
可愛いワンピースいっぱい着て、
可愛いわんちゃんと一緒に暮らす!
朝ごはんは毎日パンケーキ食べて、
お外で本読んだり、
あ、髪の毛クルクルにしてお姫様みたいにする!
その為に今から伸ばしておかないとなぁ
ママとパパが許してくれるかわからないけど…
いいなぁ
僕もこの絵本のお姫様みたいに、可愛くなれたらな。
そんな少年のお話。