【さあ行こう】
「さぁ!僕の手を取って!」
『ダメよ!落ちて怪我しちゃうわ』
「大丈夫!僕を信じて!」
『うぅ………』
『……えい!!!』
少女は少年の手を掴み、勢いよく窓から飛び降りた。
少女の身体は、重力を無視し空中に浮いた。
「ほら、僕の言った通りだろ?」
少年は明るく微笑み、少女は優しく笑った。
2人は風の様に、滑らかに飛んだ。
子供の2人なら、
きっと何処へだって、飛んでいけるだろう。
そんな2人のお話。
【水たまりに映る空】
「あ、やっと晴れた」
私は刺していた傘を閉じる。
「よかった、お花濡れちゃダメになっちゃうもんね」
今私は友達の居る病院にお見舞いに行く途中だ。
「…確かこの館の7階だったよね」
高く聳え立つ建物を見上げる。
ぴちゃ、ぴちゃ、
水たまりを踏みながら歩く。
ふと、水たまりの反射した世界に目を奪われた。
そこには空中に浮かぶ空が映っていた。
「え」
私の戸惑いを覆い被すように
ドシャッと鈍い音が前の方で聞こえた。
そんな空くんのお話。
【恋か、愛か、それとも】★
一つ目は、些細な恋心。
ちょっとしたことでドキドキしちゃって、
貴方とならなんでも初めてで。
二つ目は、平穏な愛心。
恋が芽生えて、愛が育って。
貴方の気持ちが落ち着いて、それがなんだか寂しくて。
三つ目は、孤独な冷心。
どっちが悪いとかじゃなく、
ただ貴方の生活に私が居る必要性を感じなくて。
「そんなことないよ」って貴方は言うけど、
行動がそれを示してくれなくて。
そんな三つの心のお話。
【約束だよ】★
「面白がって別れるって言わないでよ」
「前も言ったよね、これで3回目だよ」
『まあね』
まあねってなんだよ。
大学に進学してから、貴方変わっちゃったね。
忙しいを理由に貴方から連絡してくれないし、
私から連絡してもそっけないし、
嘘ついて未読、既読無視されるし、
お疲れ様って最後に言ってくれたの1ヶ月も前だし。
どれだけ辛い思いしても、
貴方との思い出が邪魔をして、区切りがつけられない。
貴方はきっと、新生活で忙しくて
私の事に手がつけられていないだけ。
大丈夫。嫌われてない、冷められてない。大丈夫。
愛してるって言ってくれたんだもの。
そんな依存症な私のお話。
【傘の中の秘密】
「…あー。俺、君のことそういう目で見れないんだ」
「だからその…ごめんね」
そう言って貴方は立ち去った。
外の門で友達を待たせてる。
荷物を持って、私も学校を出る。
『あ、帰ってきた!』
『…ど、うだった…?』
[ん?…あー、振られたよ?]
[一方的すぎてびっくりしちゃった笑]
『…そっか』
日傘をバサッと勢いよく広げる。
『珍しいね、普段日傘刺さないのに』
[最近日焼け対策頑張ってるの!]
必死に声を張る。
日傘、持っててよかった。
そんないつもより傘を低く持つ私のお話。