お題『春爛漫』
春の風に急かされて、桜がゆらりと頭をもたげ、挨拶をした。
たくさんの桜が、各々不揃いに。
時折、挨拶がわりに桃色のやさしい吹雪を舞わせながら、暖かなスポットライトを浴びて。
初めまして。また来ました。よろしくお願いします。そんな一日。
あなたの心に、春が満面の咲みを浮かべて、やって来る。
お題『七色』
人はひとつの光だけでは満足出来ない。色が変わることが、面白いと感じる感性がある。
変化することは怖いことじゃない。変わらない事も、拘るものではない。
変化を恐れないで。でも、変わらない事も、恐れなくていい。君が君らしくあるために必要なら、それは紛れもなく怖いことじゃないのだから。
お題『記憶』
うっすらと遠い昔。曾祖母と歩いた道。
彼女のことが、大好きだった。
でも、私が大きくなるにつれて、彼女は小さくなった。
とうとう、彼女は私が分からなくなった。
私は、彼女の横たわる病室で、泣きそうになるのをこらえた。
泣けなかった。
知らない人が来て病室で泣かれたら、きっと驚いてしまうから。
本人の方がきっと泣きたい。
先に泣く訳にはいかなくて、「はじめまして。」と笑顔で挨拶した。
喉がヒリヒリして辛かった。
私と彼女の思い出は全て、私の記憶の中にしかほとんど残っていないのだと理解した。
もう、あの日の二人の思い出は共有できない。
私の頭の中で、ゆっくり風化していく。
たまに彼女の好きな花を見ると、ふと思い出す。
彼女の背の低さを。彼女の声を。顔を。
あと何度、私は思い出せるのだろう。
記憶が、本のページが日に焼けるように、セピア色になるのが、怖い。悲しい。
お題『もう二度と』
私に顔を見せないで。関わりたくない。
君からそう言われた時、とても悲しかった。獣のように毛を逆立てさせて、敵意がむき出しで。
「ごめんなさい」と言っても、許してくれなさそうで。それだけ君を傷付けたのだと理解して、申し訳なさで頭が自然と垂れ下がった。
さっき言わなければ、君を悲しい思いにさせなかったのに。
「…嫌なこと言って、ごめんね…」
できるだけ慎重にそう言ったら、きみはきゅ、と口を噤んだ。
「…そうだよ、とても嫌だった……。…ごめん、カッとなった」
僕が悪いのに、君の方が辛そうな顔になってしまった。
そんな顔させて、ごめんね。
お題『曇り』
どうしたの。何か嫌なことあった?悲しいことあった?
なんだか雨が降りそうな顔。
よく寝て欲しい。悲しい思いを君がしないで欲しい。
無理に聞いたりは絶対しないけど、何かあるなら話して欲しいな。