いつまでも降り止まない、雨
ざぁ、ざぁ。ざぁ、ざぁ。
雨が降っている。いつまでも降り止まない、雨が。
この国ではもう何年も太陽を見ていない。
青空を知らない子どももいる。
おかげさまで作物が育たず、生活は苦しくなる一方だ。
そう、旅人に言うと、
「さる神が祀られている祠はどこだ。」
と聞いてきた。確かにカミとやらがいると噂されている場所なら心当たりがあった。
そいつに場所を教えるとその方角へ向かっていった。
何日間かしたのちに雨が止んだ。皆、老若男女が喜んでお祭り騒ぎになった。
あの旅人はいったいなんだったのか?
作業をしながら考えていたらふと思い出した。思い出してしまった。
カミがいると噂されていた場所にいた神様とやらは確か、
かつて“干ばつを起こした得体の知れないモノ”だと。
あの頃の不安だった私へ
拝啓
さわやかな5月の風が心地よく感じられます。貴方はいかがお過ごしでしょうか。
あの頃の私は死にたい、消えたいと願ってばかりでした。
誰に対しても相談できずにいました。
迷惑をかける、自身が思っていることを相手に言うことが怖くて仕方がなかった私へ。
大丈夫!とは自信を持って言えないですが、今私は楽しいです。
時に死にたくなることも、消えたくなることも未だにあります。
でも、あの時死ななくてよかったと思える時が絶対にきます。
心が死んでても、消えたくなってもここまで生きていてください。
何もいまだに残せていない私からのお願いです。
逃れられない呪縛
世界はキタナイ色に染まっている。
人は助け合い、喜びを分かち合う時もあれば、
他の者を貶め憎しみ合う。
まるでいろんな色で塗りつぶされた紙屑のように。
どうしたって人間というやつはそういった呪縛から逃れられそうにない。
唯一、逃れられるとしたらお綺麗な聖人だの、
莫迦みたいに品行方正でいようとする役人、
死んだように任務を遂行する奴らくらいだろうか。
酒を飲みながらオレは思う。
こんな絶望的な状況でどうにかこうにかしようとすることが間違いなのだ。
唯一残った人類の希望の国。
表面上では明るく過ごしている者も皮の下ではどろどろとした汚いナニカで詰まっている。
上のやつらの大半は金や自分のヨクボウが大事なナニカだ。
そんな国を救って何になる?任務なんてクソ喰らえ。
飲みながら意識が暗闇のナカに飲み込まれていった。
透明な水
「彼女はまるで透明な水のようだ。」
誰かがそういった。そのように拙も思う。
生真面目で凛としている。喉が渇いている時にちょうど良い水のような人だ。
それでいて瘴気を取り除ける数少ない方だ。
拙がお仕えしてから何年経っただろうか?長い間であるのは確かだ。それでもなお、彼女、女教皇とも呼ばれている彼の方の性格を知らない気がするのだ。
いつか、自分ならその本当のかおを見せてくださるだろうか。それはない気がする。
日々をそう思い、過ごして行くしかない。そう思いながら。
突然の別れ
彼女が亡くなったと人づてに聞いた。突然の別れだった。
どうしてそうなってしまったのか、抜け殻のようになった俺の頭の中に入ってきた言葉があった。
付き添っていたのはあの薄気味悪いガキ、役割は死神。ソイツが死んだと告げた、らしい。
ふざけるな。どうして俺が一緒にいなかったのかと。光を失わなければならないのかと。
こうも思った。
あいつのせいなのか?
あいつが彼女を殺したんじゃないのか。
そう囁いたコエがキコエタ。
聞こえる、うるさい。きこえる。きくな。
俺は頭を打ちつける。
冷静になれ。そう言い聞かせて。
そうでもしないと気が狂いそうだ。