梅雨
召使いの話によると、どうやら地球には“梅雨”と言う季節があるらしい。
この季節は雨がよく降り、靴が濡れて嫌になるといっていた。雨というのは水の粒がそらから降ってくるらしい。
確かにそれは嫌なモノだ。濡れると不快だ。何より、僕自慢の毛並みが台無しになる。
だというのに、だというのに!なぜ!この僕を雨の中連れて行くんだ!?
見せたいものがあるからって、こんな天気の中何をみるというのだろうか?召使いはおかしくなったのか。いや元々変わっていたニンゲンのメスだ。
そうして不機嫌な僕を抱えてゴキゲンな良いご身分で歩いて行く。そうして立ち止まった。
あおい色や紫色の花が咲いていた。たくさんの同じ花が咲いていた。
ここが梅雨の季節で一番好きな場所らしい。花の名前はアジサイで、召使いは好きだとも。
梅雨が嫌いになれない理由のひとつらしい。
確かに綺麗だ。ずっとここにいれないのが少しだけ勿体なく思えた。
ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
夜の荒野の中を走る。嫌な予感がしているから国の外に出るのは嫌だった。
外は危ないってよく聞く、“死神”が出るからって。
何か獣のような息使いが聞こえる。死神だろうか?
だから、ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
そこでその子の人生は終わってしまった。
「ああ、また人が死んじゃった。」
嫌だなぁ。人が喰べられたたことも、死神がいみ嫌われることも。
あの子はジャックはいい子なのに。あのことがあったのに、辛い役割を果たしている。
人を憎まないとても優しい子だ。
優しいセカイになりますように。誰も苦しまないセカイになりますように。
みることしか、記録することしか出来ない私は祈ることしか出来ないけれども。それでも
この願いが叶いますように。
「ごめんね」
親愛なるジャックへ。
この手紙を貴方が読んでくれてありがとう。
でも、見つけたってことはきっと私はきっともういないのかな?
さて、前置きはこのくらいにしてお願いがいくつかあります。なんて私らしくないかな?
まずひとつ勝手な願いだけれども、生きてください。
どんなに苦しくても、辛くてもそれが過ぎればきっと幸せが来るはずだから。
貴方がこっちに来る時にはお話を聞かせて欲しいんだ。
ふたつ、人を物事を、世界を恨まないでください。
恨みながら生きていると目の前がそれしか見えなくなってしまうから。幸せを掴むことができなくなってしまう。
難しいかも知れない。
最後にお願いではないけれどもこれだけは言いたい。
先に死んでしまって、こんなことを押し付けてしまってごめんね。
こんなこと言える資格は私にはないけれども、貴方と過ごした日々はとても幸せだった。ありがとう。
“月”より また来世で逢おうね
天国と地獄
死んだら人は天国か地獄に逝くらしい。
寝付けない真夜中にジャックはふと思った。
実際のところジャックには本当かどうかわからない。わかるのは魂を運ぶ冥府があるといったことのみだ。
では、ソールイーターに喰われた魂はどこへいくのだろうか?
いや、そもそも魂は消滅してしまったのだから。このことを考えてもしょうがない。そのことはわかっているのだが、考えが止まらない。
(もうないってことは、彼女とはもう会えないのか。)
寂しさ、虚しさ、胸がきゅーっとする。
人から聞いた話によると、ジャックはあまり感情が豊かではないらしい。
お前は不気味だの、何を考えているのか、なんてことも言われたこともあった。お前は地獄に堕ちるなんてことも。
そう考えたら、ジャックは地獄に言われた通りきっと堕ちるのだろう。
彼女を、他の人を救えなかったのだから。今の役割を放棄していないのも罪滅ぼしのためなのかも知れない。
そうして、また朝が来るのだ。
月に願いを
突然だが、私は生まれた時から別の記憶がある。こことは別の世界での私でない私の記憶。
そこでの私は平凡で幸せな日々だった。最後は異世界転生モノみたいにトラックに轢かれて生まれ変わったようだった。
今は、世界を守る役割のひとつ“月”としてここにいる。
最初はなんというか、興奮していたのだと思う。平凡だった私が、特別な何かになれて。誰かの役に立てて。
でもだんだんと帰りたいって思うようになった。あの平凡な日々が恋しくなった。
でもそれはきっともうできないから。
せめて
私の大切な人たちが今日も幸せでいれるようにと。
月に願いを込めて祈っている。