空に向かって。
空ってなんで青いんだろう。
そんな疑問を、2年前の僕は真剣に考えていた。
そうしたら、
「それはねぇ、海と太陽が、空を青に染めてあげているのよ。」と、教えてくれた人がいた。
幼稚だった僕は、貴方が空のことを疑問に思って、考えていたと思うと嫉妬して。
空に向かって舌打ちした。
春風ともに、あなたに恋をした。
桜の木の下で、屋上を眺めるあなたに。
春風とともに、私はあなたに会いに行った。
落ちゆく視界が、桜と同じように散り落ちていく。
貰い泣きって、どんなに美しいことだろう。
自分が起きたことでもないのに、相手に共感して、
一緒に痛みを、涙を、分かち合える。
世界一優しい人といってもいいのではないか。
菜々は虹が好きだった。ただ綺麗だから、だけではなく、「虹は七色。私は菜々だから、自分が虹を七色にしているような気になるんだ、だから好き。」と、よく言ってた。
雨上がりの校舎。2人の帰り道に、虹がかかった時。2人で、走って見渡しがいいところに行って、一緒に見たものだ。今とはなっては懐かしい。
そんな菜々も、高校を気に上京し、もう疎遠だ。
だから、たまたま思い出した、そんな時こそ。
君が染めてくれた虹をしっかりと見つめようと思う。
人が死ぬ時、記憶は最後まで残る、というのを聴いたことがある。
私の彼氏は、若年性アルツハイマーで、記憶がどんどん薄れていく。
一緒に行った場所も、食べたものも。私のことすら、忘れてしまう。
こんなこと知らなかったら、幾らかはマシだったのかな。
彼が死ぬとき、貴方の脳内に私はいるのかな
私が死ぬとき、貴方は私の隣にいるのかな。
私と、付き合ってていいのかな。
考え出したらキリがない。私が虚ろな表情をしていると、彼が話しかけてきた。
「あの 大丈夫ですか?」
「⋯ 私は、貴方の彼女で、、忘れて欲しくなくて」
忘れて欲しくない。その思いで、必死に話した。
「僕の⋯彼女 ちゃんと、覚えてる。○○ちゃん。」
どうやら、彼が死ぬ時、私は彼の記憶の中にいるらしい。