からからと、アイスブルーの飴が鳴る。
ラムネ、ミント、あるいはダイキリ。
「それはないか」飴だし。
手の中で、瓶の内で、アイスブルーの飴が鳴る。
丸い透明さは色ガラスに似て、どうしても思い出す。
アイスブルーの飴が鳴る。
ひとつ消える。
「ちょっと」
「ただいま、考えてた?」
「お土産って言ったくせに」
「ちゃんとあげるよ」
濡れたようなアイスブルーが、ソーダを含んで落ちてくる。
【澄んだ瞳】
地元のお祭りで一度だけ、酒屋が出店したことがある。
学校のグラウンドで純米酒を売るなんて、あれが最初で最後でなかったろうか。
黄色みを帯びた甘い酒は、町内会伝統の焼きそばに不思議とよく合って、ついでに焼き鳥を添えれば完璧だった。
今年も祭はやらないらしい。
【夏祭り】
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「これが破滅の運命を回避した結果だ。満足したかね?」
どうして。
どうして!?
「わたくしは幸せになりたかっただけなのに!!」
破滅に至る道筋を、トラウマとなる過去の出来事を、可能な限り回避しようと努めただけだった。
けれど、その結果……平民であるヒロインは、攻略(すくい)の道を閉ざされていた。
「君は幸せになっただろう」
「どこがですの?!」
わたくしという悪役が消え、攻略対象に会うことなく、階級社会に『正しく』歪められたヒロインは。
悪魔に憑かれて史上最悪の魔王となり、国の全てを瓦礫と変えた。
改心させる聖女(ヒロイン)が消えた以上、あの子をわたくし達の手で、滅ぼすしかなかった……
「わたくしは、わたくし達は、幸せな未来を望んで動いてきたのです! それなのに、」
「君の運命(やくわり)は『彼女の敵』だ。この世界にある限り、神であろうとそれを違えることはできない」
君が『悪役令嬢』となり破滅することが、一番平和なハッピーエンドなんだよね。
何度も言っているけれど、何度も忘れるんだから仕方がない。
「さて、コンテニューはやるのかい」
「当然ですわ!」