私は至って健康体なので、一度も入院したことはない。だけど、私の心は今でも病室のベッドで横たわったままだ。いつ、退院できるんだろうか?
3年ぶりに開催された町内夏祭りは、かつてないほどの盛り上がりを見せていた。
人の波に揉まれながら、僕は、道行く人々の顔をひとりずつ見つめる。みんな、マスクなんてしていない。そして、どの顔も笑っている。日頃のストレスを全て発散するかのように、傍若無人に叫んでる人もいる。全て、普段の日常からは考えられない光景だった。祭りは、人々に一夜だけの魔力を与える。
その魔力によって、祭りに参加する全ての人々が意味のある存在になれる。例え僕のように、だれにも知られることなく、そこに存在するだけでも、祭りの士気を上げることができる。人は多い方がいい、それが祭りなのだ。
[花火が上がるぞー!!]誰かがそう叫んだのを合図に、
夜空に大きな花が咲いた。それは、とても美しいものだった。しかし、すぐに弾けて、藍色の闇の中へと消えていく。この街も、明日にはいつもの殺伐とした街に戻ってしまうのだろう。ゴミが散乱した風景と、それを黙々と拾う人たちの姿が容易に思い浮かぶ。だけど、今だけはこ
の奇蹟のような瞬間を精一杯楽しもうと思った。
またひとつ、花火が消えるまでずっと。
鳥かごの外には、更に大きな鳥かごの柵が立ち塞がっていた。この世界こそが、大きな鳥かごの中でしかないのだ。
僕のおじいちゃんは、発明家だ。しかし、いつも失敗作ばかり作ってしまう。だけど、今度は成功したらしい。タイムマシンを作ったのだ。未来や過去に自由に行くことのできる、あのタイムマシン。しかし、おじいちゃんのタイムマシンは過去に行くことはできても、未来に行くことはできないらしい。
だけど、僕にとっては何の問題もないことだ。僕が行きたいのは、恐竜が生きてた頃の時代なんだから。僕は迷わずスイッチを押して、恐竜に合うことに成功した。
どうやって帰るんだっけ?
私の周りには、誰もいない。みんな、どこか遠くへ進んでしまった。もう、背中も見えないところまで。みんながつけていった足跡を見るたびに、私だけは嫌になってしまう。それでも、進まなければならない。リタイアは、許されないのだから。