あの山の向こうには何があるのだろうか?
あの海の先には何があるのだろうか?
ただ、自転車を漕ぎ続けていれば、見えてくるのだろうか?
そのときは、私は自由だろうか?
そんなとりとめのない考えが、自転車を漕ぎながら、溢れてくる。今なら、引き返せるだろうか?
まだ、やり直しが効くだろうか?
もういい、もういい、全部投げ出してしまおう。
そのためには、まず、心から自由にならなくてはならない。私の生きることのできる世界は、ここだけじゃない。そう、証明するために。
[今日、三人で吹奏楽部、見学しない!?]
突然、沙也加がそんなことを言い出したので、今日、私達、いや私は吹奏楽部を見学しなければならなくなった。沙也加は、先輩目当て。唯菜は、沙也加に合わせて、といったところだろうか。私には、何の目的もないが、とにかく行かなければならないみたいだ。だって、友達なんだから。人間関係は大事なんだから。
[早く行くよ~二人とも。]沙也加が、そう言って、
笑顔で、教室を出ていく。それを追いかけるように、私も教室から出ていく。少しして、唯菜が私を慌てて追い越していった。
夏がくると思い出す。君の白い肌。君のハツカネズミみたいに充血しきった目。あの麦わら帽子。
全て、あの夏が消し去ってしまった。いや、私が消し去った。8月31日。私にとって、人生で、一番忌まわしくて、一番美しい日だ。どうか、聞いてほしい。私が犯した罪を。
悔やんでも悔やみきれない。
もうおしまいだ。自分なんて生きてる価値がない。
何やってもうまくいかないし、何の能力もない。
こんな、ダメダメな自分が生きてていいのだろうか。
↓
まだ諦めちゃいけない。今は、うまくいかなくていい。でも、いつかはきっとできるようになろう。
僕には、可能性がある。
こんな毎日を繰り返している。気が狂うほどずっと。
頼むから、来ないでくれ。狭い、暗い、闇の中で俺はそう願い続ける。お前は、いつも明るく輝いている。はるか遠く、計り知れない場所に存在するだけで、周りを明るくできる。だが、俺にはその明るさが鬱陶しいんだ。頼むから、来ないでくれ、永遠に。そんな願いは虚しく、10秒後にそいつはカーテンの隙間からやってきやがった。
地獄の始まりだ。