『沈む夕日』
塾へ向かう途中必ず海沿いを通る。
その日はたまたま部活が早く終わった日だった。
チャリンコで走る直線道ほど清々しいものはないと思う。
ふと、偶には別の道に行こうと考え裏道を通った。
そこは、海底トンネルを通る道だった。
トンネルを抜けるとそこには水平線に『沈む夕日』を見つけた。
……言葉が出なかった。
なんと綺麗なんだろう。ただその言葉が自分の中を埋め尽くす。
「明日も…頑張ろ」
『君の目を見つめると』
君の目を見つめるのが好きだった。
君の目にはたくさんの感情や思い出が詰まってて…とても綺麗だった。
君は覚えてる?あの日見た星空。イルミネーション。
夜景。人々の笑い声。
全部君の目には輝いて見えただろう?
でも『君の目を見つめると』どうやら雨模様のようだね。
安心して。僕が一緒にいるよ。
いっぱい雨を振らせて虹を出そうよ。 ね?
『それでいい』
「あら、お父さん。ペンキ塗ってるの?」
「あぁ、最近禿げて来たからな。」
ぎゃははっ! ベタァ
「あっ!●●ダメじゃないか!?」
「あははっ、●●ったら…手が真っ赤よ!」
「…手形が着いちゃったな」
「あら、お父さん別にいいじゃない。」
「う〜ん…」
:
:
:
「おじいちゃんなんでこの壁手形着いてるの?」
「…あぁ、これはお前の母さんが着けたんだ。」
「ふーん…もう一度塗り直さないの?」
『いいや、それでいい…それがいいんだ。』
「へへっ、おじいちゃんらしいね」
『1つだけ』
…ねぇ、本当に別れるの。
__そ…っか。わかった。
今までありがとうね。
<…●●●。
大丈夫ッ…気にしなッ…
…分かってる。別に好きな子が出来たんでしょぉ?
ねぇ…こたえてよぉ…
<●●●
●●●だけじゃもう分からないってばぁ…。
最後にッ一つだけ…いぃ?
今までありがと…『彼女』さん…大切にしてあげてね…
『大切なもの』
卒業式の日。僕は校門の前に咲いてる桜を見つめていた。
『なぁ、何ボケっとしてるんだよ?式始まっちゃうぞ!』
あぁ、ごめん。今行く。そう幼なじみに向かってそう呟いた。
『…今日でお別れだなぁ笑。お前は神奈川の進学校だっけ?いいなぁ。』
僕は苦笑しながら話を聞いていた。
時間は早くすぎるもので、式が始まる。
僕らは最後の校歌を歌った。 …今更だが、校歌を歌うのにこんな心を込めたのは3年間でこの日だけだろう。
__卒業証書が渡される。僕の名前が呼ばれた。
<●● ●●
はい。と精一杯の声で返事をする。
体育館上に響き渡った声。不思議と恥ずかしさは無かった。
学年全員に渡し終え3年生の別れの言葉と合唱。
旅立ちの日に__歌う中で少し泣いたのは僕だけの秘密だ。
全校合唱が始まる。『大切なもの』と言う歌だった。
―大切なものに気づかない僕がいた。―
そのフレーズが僕の心の中にずっと残っていた。
今までその理由がずっとわからなかったが、
今。分かった気がする。
もう学校に来ることはないという事実、誰もいない教室、体育祭、委員会、部活…
今までの思い出と経験、そして仲間との別れ。当たり前が崩れていくのを今嫌という程、痛感した。
式が終わり、校舎を見上げる
僕の、『大切なもの』は___