誰よりも、ずっと
もう何年この場所に居るのだろうか。
何不自由なく生きている僕だけど、彼女は僕を養う為に、苦労して仕事をしている。
何となく申し訳なくなって、彼女が仕事帰りに買ってきてくれる食材で、2人分のご飯を作って食べて、一緒にいる時間を大切にしている。
僕はたまに彼女に心配で聞いてしまう。
「ねぇ....?僕も働いた方がいい..?」
彼女はやっぱり、いつものように答える。
「大丈夫だよ!私は○○君を養いたいから働いているんだよ!」
「ふぅん......」
「さ!明日も仕事だし、寝よ?」
と彼女に腕を引っ張られながら、ベットに向かった。ベットに入るなり、彼女は仕事疲れからなのか、すぐに寝入ってしまった。
僕は眠れずに彼女の顔を見ながら、少し考え事をしていた。
(僕はいつからこの場所に居るんだろうか...。きた記憶が無いし、元々この人と知り合いだったのだろうか。)と考えていると、急に頭が痛くなってきた。
「ゔゔ......」
断面的に今までの記憶が蘇ってきたような気がしてきた。
(あっ......あとちょっと...)と思っていた時に、「○○君」と彼女が呼んでいた。
ふと顔を上げると、真顔の彼女がこちらを見ていた。「大丈夫?」と少し冷たい声で言った。
そしたら、今までの記憶達がバラバラと音を立てるような感じで、僕の頭の中から消えていった。
「大丈夫だよ......起こしちゃった?」
と声をかけると、彼女は安心したように「心配だったから」と返してくれた。
そのうち睡魔に襲われて、眠りについた。
彼女が僕の頭を優しく撫でているうちに、意識が遠のいた。
「ふぅ......危ない危ない。何でいつも思い出そうとするのかなぁ〜。君はずっとここにいるんだよ?
誰よりも、ずっと愛し続けてあげるからね?」
と言って彼の頭を撫でた。
これからも、ずっと
「これからも、ずっと
一緒に居るって約束したじゃん...。」
どんなに...どんなに、君に、言っても、
君は目を開けることはない。
「ねぇ...。約束したよね?僕を置いていかないって、指切りして、笑い合ったあの日に。」
君の頬を撫でても、君は僕の方を見ない。
僕は棺の中の君の胸元に勿忘草を置いた。
「君と僕が好きって言ってた、花だよ......。
もう、もう......一緒に、つむことは無いけど、君の事ずっと忘れないから」
そう言って僕は、君から離れた。
沈む夕日
また今日が終わってしまう。
そう思いながら夕日を眺める日々。
沈む夕日を見ながら、いつもため息を漏らす。
明日こそ上手く生きられますように。
いつもそう願いながら、夕日を眺める日々。
それでいい
ただ貴方が欲しかった。
本当に、心から貴方が欲しいと願った。
貴方が私の方に向いて欲しかった。
たったそれだけなのに......。
何かを代償として得たものは
貴方ではない何かだ。
本当の貴方は私ではなく
他の人を選んだ。
私の努力は無駄だった。
貴方好みの人に成りたくて
血が滲むような努力をした。
だけど
貴方は
私の事なんて
どうでもよかったらしいね。
じゃぁ
救われなかった私を
救ってくれる
人なんて
現れると思う?
1つだけ
パチッ......。
身を覚ましたら、知らない場所で眠っていた。
暗くて冷たいタイルの上で寝転がっていたらしい、体が痛い。
(此処は私の知らない場所。確か私は自宅のベットで眠っていたはず......。)
見知らぬ場所に居るからだろうか、今日は妙に頭が冴えている、その為落ち着いて情報を処理出来る。
そんな事を考えていると、コツコツ...と足音が聞こえてきた。
怪しいヤツが来たと思い、臨戦態勢で相手を待っていた。曲がり角から長い長い影が伸びて来て、私が居る所まで来ようとする。
ここで油断したらやられると思い、何時でも逃げれるよう逃げ場を考えていると、ヤツがこちらにやってきた。
其奴は手にはランプを持っており、ほのかに周りを明るく照らしていた。
其奴は私を見ると、私の前まで行き立ち止まって言った。
『お前はなんでこんな場所に居るのだ。』と低い声で私に尋ねた。
私は其奴に言った。
「知らないよ。目が覚めたら、こんな所にいたんだよ。」と強気で言ってやった。
『......』としばらく其奴は黙っていた。
私は其奴がなんて言うか待っていた。
おかしな事を言い出したら逃げ出さないと、と。
『お前には欲があるようだな。』
なんて其奴が言うから、私は暫く固まっていた。
(何を言っているんだ此奴。)なんて思っていると、其奴は私の心を読んだのか、私の思っている事をそのまま口にした。
私はだんだん其奴にイライラしてきた。
顔は暗くて見えないし、喋り方もムカつく。
私は意を決して、其奴からランプを奪い取って顔を見てやった。
其奴は眩しそうにしていたが、私は驚きのあまり持っていたランプを落としてしまった。
其奴は黒い服を着ており、頭にはツノ、下の方には尻尾を生やしていた。
(“悪魔”だ!)なんて思っていると、其奴は私に言った。
『私は悪魔だ。お前の欲望を叶えに来たのだ。
ただsh...』
私の欲望?何を言っているか最初は分からなかったが、無料で叶えてくれるのなら言おうではないか。
私は悪魔が最後まで言い終わる前に言った。
「私の欲望を叶えてくれるのだな?
じゃぁ、私の願いは......」
気がついたら、目の前が真っ暗になっていた。
『やれやれ......。
やはり人間は欲にまみれすぎているようだな。
1つだけ叶えてやると言おうとしたのにな。』
悪魔は、転がっている2つに別れてしまった其れを見てその場を後にした。