大切なもの
大切なものなんていつかは消えてゆく。
どんなに愛しても、愛されても消えてゆく。
だったらこんな気持ちなんていらない。
こんな気持ちがあるから、いつかは消えていく運命も残酷に思えてしまうから、こんな気持ち......元から持ち合わせている感情なんて......消えてしまえばいいんだ。
僕...?いや、私....?はどうすればいいの?
寂しい気持ちなんてなければいいのに............。
エイプリルフール
「エイプリルフール......
だとしても、嘘ついたことないんだよなぁ......」
と愚痴をこぼす。
嘘つく相手もいないし、どんな嘘をついていいか分からない。
「何でこの日だけ嘘ついていいんだよ......。」
そう一人部屋で呟いた。
幸せに
「はぁ〜。今日の配信も良かったなぁ〜♡」
そう呟きながら、たった今終わった配信内容を振り返っていた。
「この人は喋りも上手いし、ゲームも上手!なんと言っても、///声がマジで好き///!」
なんて言いながら、ベットの上で悶絶していた。
私は彼が1桁いや、0人の時に偶然見つけて、推しにしてしまった。
いやぁ、我ながらかなり変わっていると思う。
普段の私ならすぐに飽きてしまうので長続きはしないが、今回は5年くらい続けて見ている。
ふと、部屋の時計に目をやると夜中の3時になっていた。
「やば!明日早いんだった!」
なんて言いながらベットに入り眠りについた。
あれから3日後に、彼が『大事なお知らせ』という題をあげていた。
なんだろうと思いながら動画を開いた。
動画には顔は出ていないが、実写動画だった。
(実写動画?今までやってきたことないよね?)
なんて思いながら視聴していると、画面の向こうの彼は口を開いて言った。私が想像もつかないことを言った。
『実は俺この日を持って......
辞めることにしました......。』
(え?なんで?今まで頑張ってきたよね?)
何てことを思いながら、視聴を続けました。
彼曰く、これから先大切な人と人生を歩んでいくため、動画活動を辞めるという事だ。
私は持っていたスマホの電源を消し、ベットに身を沈めた。
「そうだよね......。彼にだって大切な人と一緒に人生を歩む権利はある。彼にだって守りたい人がいるから......辞める時がある。それが知らない内にやって来ただけ......。」
なんて言いながら自分を慰めていると、大粒の涙か溢れてきた。止めようにも止まらず、涙は私の意思と関係無く溢れてきていた。
やっとの思いで涙を止めると、私はスマホを手に取り、彼の動画を消し登録も解除した。
「何時までも、うじうじしてられないよね!
彼が一番だって思っていた私とは、今日でお別れだ!今は彼が幸せになる事を願おう!」と言い自分の頬を両手で叩き、自分の好きなことに打ち込もうと思い、ノートを取り出し前回の続きの小説を書き始めた。
-今まで動画を見てくれてありがとう!
正直動画を辞める事は心苦しいけど、ここまで応援してくれた、みんなの思いはずっと届いてる!
最初は視聴率が伸びなかったり、アンチばかりだった、だけど、皆の暖かいコメントのおかげでここまで来れた。俺はここで辞めるけど、皆は自分の好きな事を辞めないで、全力でやって欲しい!
長くなったけど、今までほんとにありがとう!-
私は推しの最期の声を聞く事は2度と無いだろう。
何気ないふり
高校は退屈だ。
別に頭がいい訳では無い。
ただ単につまらないだけの日常を送っている。
ただそれだけの事。
友達なんて居ない。一匹狼が格好良いから憧れている奴と一緒にしないで?そんなんと違うから。
って僕は誰に話してるんだか......。
そう思いながら、窓の外を見ると先輩達が体育の授業を受けていた。
(外の授業だし、この季節は陸上か......。)と何となく見ていたら、1人の先輩がこっちを見ていた。
その先輩と目が会った瞬間、ニコッと笑顔を見せてこちらに手を振ってきた。
ビックリして、机の上に置いてあったペンを落としてしまった。隣の席の奴は「どうした?」と聞いてきたけど、そこまで仲良くは無いため、何気ないふりをしてしまった。
一旦落ち着いて、もう一度窓の外にいる先輩を見ると校庭をを走っていた。
その走る姿が素敵で、少し授業をサボってみていた。
ハッピーエンド
“ハッピーエンド”なんて、書く人又は描く人によって別々のルートがあるし、ほんの少しだけ行動を変えることによって、世界がガラッと変わり“バットエンド”にもなる。
『俺もハッピーエンドの世界で生きたかったな。』
そう言葉をこぼすのは、本の中で行き続ける彼。
彼はこの本の悪役。
何をどう頑張っても、ヒーローにもなれないし、ヒロインにも、何者にもなれない。
彼は、同じ本の中で生き続ける彼奴が羨ましかった。この本が読まれる度に同じ様に悪役を演じて、彼奴を輝かせる為だけの登場人物になるだけ。
彼は彼奴の隣に立っている仲間達が羨ましかった。
そう思いながら、今はこの本が読まれていないためぼんやりとしていると、彼奴に声を掛けられた。
「お前も向こうで話そうぜ」
そう言いながら、彼の手を引いた。
彼はこの本の物語では自身はバットエンドだけど、
今だけは、ハッピーエンドだなと感じた。