SHADOW

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ハッピーエンド

“ハッピーエンド”なんて、書く人又は描く人によって別々のルートがあるし、ほんの少しだけ行動を変えることによって、世界がガラッと変わり“バットエンド”にもなる。

『俺もハッピーエンドの世界で生きたかったな。』

そう言葉をこぼすのは、本の中で行き続ける彼。
彼はこの本の悪役。
何をどう頑張っても、ヒーローにもなれないし、ヒロインにも、何者にもなれない。
彼は、同じ本の中で生き続ける彼奴が羨ましかった。この本が読まれる度に同じ様に悪役を演じて、彼奴を輝かせる為だけの登場人物になるだけ。
彼は彼奴の隣に立っている仲間達が羨ましかった。
そう思いながら、今はこの本が読まれていないためぼんやりとしていると、彼奴に声を掛けられた。

「お前も向こうで話そうぜ」

そう言いながら、彼の手を引いた。
彼はこの本の物語では自身はバットエンドだけど、
今だけは、ハッピーエンドだなと感じた。

3/29/2024, 11:34:06 AM