目が覚めるまでに
あなたの目が覚めるまでにあなたをこんな姿にしてしまった奴らに必ず復讐する。
あなたが何をしたっていうの。あなたは会社の不正を告発しただけなのに。なぜ、正しいことをしたあなたが傷つけられないといけなかったの。
あなたが何を告発したのか私は知らない。あなたが誰にどんな方法で傷つけられたのかも今はまだ分からない。
ただ、あなたが回復ポットの中で眠っているという事実が目の前にあるだけ。
涙が止まらない。
震えが止まらない。
今は何もできないけれど全てを知るために、あなたを傷つけた奴らを見つけ出して必ず復讐する。
物理的には無理でも社会的には抹殺する。必ずやり遂げる。
非力な私でも絶対にできる。
私はハッカーだから。
病室
8年前に血液の癌、悪性腫瘍リンパ腫になった。
初めは脇の下にしこりができ皮膚科に受診したが、何か分からずに痛みがあったため痛み止めと抗生物質が処方された。そのうち、気持ち悪い日が続き消化器内科で胃カメラを行ったが異常はなかった。でもお腹を触ると胃の近くが硬いためお腹の超音波をやってもらったら脾臓が大きくなっていることが分かり、総合病院を紹介された。総合病院でさまざまなな検査をしてやっと病名がはっきりした。
告知を受けたとき、私はホッとしたのを覚えている。だいたいの人は告知を受けたら「とうして自分が」と思うことが多いと思うが、私はやっと原因が分かったことでホッとすることができた。治療に向かう心の準備ができた瞬間だ。
血液の癌は手術はできないので、抗がん剤を投与することになったが、抗がん剤は外来に通いながら行っていくことが通常だ。ただ、一番初めの抗がん剤は副作用が出ることもあるため入院することになる。
今まで病気らしい病気をしたことかなく入院したこともない。
治療について医師に説明を受け、家族が帰ったあと1人になる病室はなんとも寂しいものだ。
病室から見る夕焼けはさらに寂しさがつのる。でも、まだ死ぬわけにはいかない。
幸い私は、抗がん剤の副作用が強くなく
髪の毛が抜けたのと少し気持ち悪いのが長く続いたくらいだった。
あれから8年たったが、今は元気に生活し仕事にも行っている。
あの時病室から見た夕焼けは低い雲がかかり綺麗だったが、私の不安な気持ちをはらみ物悲しさが募った。忘れられない夕焼けだ。
明日、もしも晴れたなら
むかしの話し。
明日、もしも晴れたなら運動会が開かれことになっている、。でも運動会は嫌いだ。
運動神経が乏しい私は、運動は何をやってもダメで運動会なんて生きた心地がしない。
リレーなんて足が速い人たちがクラスの代表で走ればいいのに、なぜ全員参加なのか分からない。遅いひとが走るのを見ても楽しいとは思えなし、走るのが苦手な私には本当辛かった。だから明日は雨がいい。
そんな私もちよっとだけ頑張れそうな種目がある。
障害物競走だ。
障害物競走は、リレーのようにただ走るのではなく、跳び箱を飛ぶ、平均台をわたる、麻袋跳び、縄網くぐりなどの障害物をクリアーしながらゴールを目指すもの。
この中で一番得意なのは、縄網くぐりだ。縄網くぐりは早く進もうとして闇雲に網を持ち上げてもなかなか進めないが、後ろの方にいても前の人が網を持ち上げてできたスペースに手を使わずに頭を入れて行くように進めば、あっと言う間に一番前にでることができる。練習の時は一番でゴールすることができた。もちろんいつも一番になるとは限らないが、それでも他の種目よりはマシだ。私だって運動会で1つくらいは勝ちたい。
明日、もしも晴れたなら少しだけ運動会を頑張ってみようかな。
本当に少しだけ。
だから、1人でいたい
家族との食事の時間、友達との買い物の時間、誰かと過ごす時間は楽しもの。
1人で過ごす読者の時間、料理の時間、車を運転する時間は他のことに惑わされず集中力が増す自分だけの時間。
でも、一番の自分の時間はお昼ご飯を食べたあとの少しのお昼寝時間だ。休憩時間は1時間だから、お昼寝ができるのは20分くらいになる。何かの本で長く寝ると夜の睡眠に影響が出るので、お昼寝は14時までに20分以内にするのがいいと書いてあった。
会社のデスクでのお昼寝時間はストレス解消や疲労回復には最適な行動となる。
同期たちとのランチも楽しそうだか、お昼寝の時間を確保したい。だから、お昼は1人でいたい。
澄んだ瞳
子供たちにせがまれてペットショップへ仔犬を見に行った。今日はパパがいないので、仔犬を購入する予定は全くない。
子供たちもそのことは納得して「今日は見るだけだよ」と言い合いながら仔犬のケースに近づいていく。
なぜ仔犬を飼うことになったかといえば、上の子が友達の家でゴールデンレトリーバーを見たことから始まる。
「犬が欲しい!ママ!犬!」
友達の家から帰ってきてからずっと言い続け、足をバタバタさせながら私のあとを付いて歩き、下の子もつられて「犬!犬!」と犬コールだ。
パパに相談しないとね~。と誤魔化しながらいたが、なんとパパが一番乗り気となり犬を飼うことがすんなり決まってしまった
うちはゴールデンレトリーバーを飼うほど広くないので小型犬の仔犬を飼うことになったが、子供たちに世話は自分たちでやるように言ってある。初めは世話をするだろうがそのうちにママの仕事になるのは、あるあるだろう。
私はあまり飼うことに乗り気ではないが、子供たちのあとから仔犬のケースまでやってきた。子供たちはケースに顔を近づけてキャッ、キャッと嬉しそうに仔犬を覗いていた。
「あまり近づくと噛まれるかもしれないから気をつけて」と言いながら、子供たちから目を離し顔を上げた先にあったケースが目に入った。その中には美しい毛並み、澄んだ瞳、フリフリと愛嬌よくシッポを振る仔犬がいた。
そんな澄んだ瞳で見つめられたら…
結局、その仔犬をお買い上げしてしまった。帰宅したパパには呆れられたが、だってあの瞳で見られたら胸がグッとなって
連れて帰る選択肢しかなかった。
どうせ飼うのだし子供たちも気にいっていたからいいでしょ。
連れてきたときも今も「澄んだ瞳」で私を見るが、めちゃくちゃヤンチャで手がかかるこの子の世話をしているのはやはりママだ。