「桜散る」
何回目かの桜が散る頃、僕は大人になってた
毎日忙しくする日々に季節なんて考える暇もなかった
ふとあの頃を思い出す。
まだ小さく無邪気に過ごしてた日々を。
春が来ることが嬉しくて仕方なかった。
でも今の僕は春が来る度に憂鬱だ。
新しいことが始まる時ってなんでこんなにも
重く感じられるのだろう。
不安や焦りで心が疲れてしまった夜
桜並木のある公園のベンチに座っていると
どこからか風が吹いて桜の花びらが降ってきた
夜の公園は静かで街灯に照らされた桜は綺麗だった
少し冷たい風も心地よくずっとここに居たいと思えた
ぼんやりと桜が散るのを見ていると
風で舞った花びらがベンチにも落ちてきた
その桜を眺めながら嫌なことやこれからのことを
考えているとふわりと桜の香りがした。
優しく僕の不安を取り除くようにあまい香り。
桜は僕に教えてくれた気がした。
毎年散ってもまた生まれ変わることを。
冬の寒さを超えて毎年春になると葉より先に花を咲かせて
決して長いとは言えない花の寿命を見事に咲き誇って散っていく。そんな桜を見て僕は涙を流していた。
桜は綺麗だ。でも簡単に散ってしまう。
だからこそ美しいのかもしれない。
毎年人々が桜を見に行くこともそれはきっと桜だから。
桜は散っても来年も咲く。
何度失敗しても立ち上がる強さを人は持ってる。
僕はもう少し新しい環境に向き合ってみようと前向きに
考えることができるようになった。
そして桜のような儚くも
美しい人生を送りたいと思えた
雪猫
あの子が僕の前から消えてもう3年が経つ
新しい季節。春がやってきた。
春が来る度にあの子を思い出す。
僕の隣で笑ってた君を。
誰にでも優しくて人助けが大好きな君。
僕は何も言えないまま君は消えていった。
僕はもう大人になって仕事もしている。
家に帰り窓を開けたら春風とともに君の匂いがした。
どこか懐かしくて夜空を見上げながら僕は泣いた。
またどこかで。春風とともに出会えたら。
その日は朝から雨が降っていた。
僕の心も暗く沈んでいた。
午後を過ぎると雨は上がり夕方になると虹が出ていた
急いで君に連絡をした。
「虹が出てるから見に行こう」
すぐに返信が返ってきた。
「すぐに行くね。一緒に見よう!」
僕の家から君の家まで歩いて20分くらいの距離なので
それほど遠くない。
30分後君は待ち合わせの場所に来た。
君は急いで来たらしくすごく薄着だった。
季節は秋から冬へと変わろうとしていた。
僕たちは幼少期に良く遊んでいた土手に向かった。
2人で歩きながら夕焼けと虹を見た。
夕焼けに照らされて地面や木々の葉っぱの雫は
キラキラと輝いていてとても綺麗だった。
土手に着き真上にかかる大きな虹をみた
虹は思ったよりも綺麗で
僕はなんだか複雑な気持ちになった。
横を見ると空を見上げて泣きそうな顔をしてる君がいた
僕は戸惑い。なんて言葉をかけたらいいのか考えていた
すると君の口から思いもつかないような言葉が出た
「この虹はなんのために生まれたのかな」
…僕はびっくりした。
虹というのは生き物では無いはずなのに
どうして君はまるで生き物のように言うのだろう?
何も言えずにいる僕を構わず君は続けた。
「虹ってさ。綺麗だけど悲しいよね。」
君の言葉は理解できるのに意味がわからなかった。
…綺麗だけど、悲しい??
君は一体何を感じているのだろう。
虹を見て何を思って何を考えたのだろう。
何も言わずにいる僕を横目に虹は少しずつ消えかけていた
「私もいつか虹のように消えるのかな」
その言葉が僕の記憶にある君の最後の言葉だった
それからのことはあまりよく覚えていない。
もうあの日から5年経つ。
今でも君の言葉を思い出し1人考えている。
君はあの日あの場所で何を思いどんな気持ちで
あの言葉を言ったのだろう。
僕は何も聞けないまま君は僕の前から消えてしまった
まるであの虹のように。