「いっ…!」
ずきん、と突如にして足裏に鋭い痛みが走る。
見ると、薔薇の棘が刺さっていた。
ここは薔薇の園。
辺り一面に薔薇が咲き乱れている。
中にはアーチを利用して上へ上へと成長する強いものもある。
私は今日、ここに呼ばれて来たのだ。
尊敬のあの人。
尊敬すると共に、強い嫉妬心にも苛まれる、
親愛なるライバル作家にだった。
家のポストにカードが入っていたのだ。
“とある薔薇園に来て欲しい。そこにはいる時は、靴は脱いでね。花が潰れてしまうから。”
と丁寧にご注文付きで。
で、今日。
ちゃんと来てやった訳なのだが…一向に姿を見せる気配が無い。
何をしているのだろう。
痛い思いだけしに来させられたのでは無いだろうな。
イライラが止まらない。
すると、
「おぉい!此方だよ!此方を見給え!」
元気なあいつの声が響いた。
何処だ。
視界の隅に動いている影が写った。
それを追い掛けると、
薔薇園の隣にある7階建てのいかにも高そうな豪邸の屋上部分に彼が立って手を振っている。
「そんな所で何を「君ー!聞いてくれー!!」
かき消された。
「君にピッタリの花を見つけたんだ!!」
私にピッタリの花?
なんの事だろう。
「今から見せてあげるね!」
不審がっている私を他所に、彼は歩き出す。
屋上の、ふち部分へと。
やっと何をしようとしているか気付いた私は咄嗟に叫ぶ。
しかし。
「大丈夫!きっと美しいさ。」
そう言い残し、彼は堕ちた。
落ちた先は薔薇の上。
薔薇の棘が彼の素肌に刺さり、痛々しい傷を作っていた。
だが、その傷から滲み出る彼の血液は
その周りの薔薇を赤く、黒く、染めていた。
彼が染めた花は不吉にも17本だった。
いつか、話した事がある。
黒薔薇の花言葉について。
17本の薔薇について。
確か黒薔薇は、「恨み」「憎しみ」。
17本の薔薇は、「絶望的な愛」。
何が私にピッタリの花だ。
最後まで腹立たしい奴だ。
如何して、こうなってしまったのだろうな。。
薔薇独特の香りに血液の香りが混じり、
辺りには毒々しい香りが充満していた。
(“花の香りと共に”)
最後無理矢理感ありますがどうかお許しください。
いたい
いたい
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!
あつい
あつい
あついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあつい!!!!!
鈍い痛みと肌の焼ける匂い。
独特な臭さに顔を顰める。
絶えず悲鳴をあげ続けていたためか、声はとうに枯れていた。
もう、何時間これに耐えているんだろうか。
いつ、終わるのだろうか。
早く、早く解放されたい。
そんな思いが絶えず脳を占領する。
好きだよ。
痛みを与える本人が私の耳元で囁く。
目を隠されている上、何時間も痛みを感じていたため敏感になった耳に刺激が行き、
ぅあ、と裏返ったような情けない声を出してしまう。
早く、ボクの事も好きになって?
まさにアメとムチ。
痛みと愛の甘さを交互に使い分けられ、私の脳はもはや正常な判断をすることが難しくなっていた。
この痛みは胸の高鳴りからなるもので、胸が
、 、
高鳴るのはコレを愛しているからだ。
そうやって自身を洗脳した私は、ついに
あぁ、、私はあなたを愛しているよ。
首の付け根を強く締められつつ、
そう、答えてしまったのだった。
(お題無視“痛みへの扉”)
「わたしはどこからきたの?」
「ママのお腹の中だよ」
「おなかのなかにはいるまえは?
ままがわたしをたべちゃったの?」
「ううん、コウノトリさんっていう鳥さんがね、ママにあなたをくれたんだよ。」
「こう…?」
「コウノトリさん。風さんに乗ってママのところに来てくれたんだ。」
「かぜさんがわたしをままにあげたんだ!」
「そうなるね。」
「かぜさんありがとう!わたしままとあえてよかった!」
(“風が運ぶもの”)
ひらり、ひらり。
桜の花びら舞い落ちる。
ふわり、ふわり。
真っ白綿雲ゆったりと。
青、白、緑に薄紅。
色が創り出すこの世の中。
さてさて卒業卒園新生活。
これからもっと色が咲く。
春、夏、秋に冬。
さぁ、新しい1年の始まりだ。
(“ひらり”)
あの日のことは、多分、一生忘れないと思う。
だって、
だって、、
僕の、大切な人が、居なくなる前に残した言葉は、…僕にとって、一生を変えるきっかけとなったものだから。
温かいあの人との思い出は、もう二度と、更新されることは無い。
今となっては、あの人は元から存在しなかったのではと思うほど、儚い終わり方だったと思う。
だって、彼女の存在を証明するのはもはや、色褪せたこの手紙しか無いのだから。
僕の手に触れるものは、皆、褪せていく。
儚く、また、繊細に。
大丈夫。あの人もそれらと同じだったと思えば良い。
思えば、良いのだ。
そう、思えば。
愛していました。あなたのこと。
(“あの日の温もり”)