どこにも書けないこと
──君のことが好きだってことかな。
勿忘草
「別れよう」
『え…な、んで』
唐突に告げられた別れ。
「好きな人ができた、他に」
『は……?』
なにそれ、私じゃ満足できなかったってこと…?
告白してきたのはそっちなのに。
まあ、今じゃたぶん、私のほうが好きなんだよね。
冷めたってこと?
何がいけなかった?
女として見れなくなったってこと?
他の女の子のほうが魅力的に見えたってこと?
なんで、ねえ、なんで、
言いたいことを全部飲み込んで、我慢して
『そっか……わかった』
「…っ」
なんで、やめてよ、泣かないで。
泣きたいのはこっち、なんであなたが泣くの?
「これ……」
『え…?』
あなたが渡してきたのは小さい花束。
別れるときに花束渡す奴いるの…?
勿忘草。
バカなの?ねえ、知ってる?
勿忘草の花言葉。
「私を忘れないで」
「真実の愛」
「真実の友情」
別れるときに渡す花じゃない。
でも、私は知らなかった。
あなたがこの花束を、この勿忘草を私に渡してきた意味を。
ごめんね、気づいてあげられなくて。
今日は、あなたが亡くなって一周忌。
もちろん添える花は勿忘草。
言ってよ、癌なら、最後までいっしょにいたかった。
1人で苦しまないでほしかった。
大丈夫。
忘れないよ。
霜降る朝
ザクッザクッ
「ねぇー、見てー!霜ー!!」
はしゃぎながら霜を踏んで楽しそうに笑う友達。
今はもう冷えきった関係になってしまったけれど。
私が冷たくしたからかな?
でも、ごめんね。
もう、顔を見るだけで拒否してしまうくらい…嫌いになった。
余計な一言も、
人によって変わる態度も、
毎回同じ話してくるのも、
部活サボりがちなのも、
全部、全部、
嫌だ。
私が好きなもの食べてるとき、
「それ、美味しいの?なんか、まずそー」
「私それ嫌いなんだよねー」
て、言ってくるけど
人が好きで食べてるものに「まずそー」とか言うな!
女子とは普通に話すのに、男子と話してるの見てるとなんか声いつもと違うし、
少しねっとりした声でやだ。
ぶりっ子してる?
人の声とか否定したくないけど、たぶん誰がどう見ても何か違うなって分かるレベル。
自販機でミルクティー飲もうかなとか言ってたら
「わたしお茶系飲めないんだよねー」
だって、
知ってるよ、何回も聞いた。
ほうじ茶、緑茶、麦茶、紅茶、ミルクティー、抹茶。
好き嫌いがあるのはしょうがないと思うけど、一回でいいし。
部長の癖に、
「トレーニングで足痛いから休むね」
はぁ?
みんなトレーニングやってるんですけど?
足痛いとかいいながらみんな部活来てるんですけど?
部長だからって休んじゃだめではないけど、
サボりすぎ、
休みすぎ、
体力無さすぎ、
風邪引きすぎ、
免疫もうちょいつけて?
ザクッザクッ
なんか、思い出してしまった。
去年のこと。
ザクッザクッ
今日もきまずいなー。
手放した時間
君のことを想う時間を手放した
―――つもりだった。
好きになっちゃいけない人なんていないはずなのに。
誰を好きになろうが自由のはずなのに。
「彼女がいる」と聞いただけで悪いことをしている気分になる。
好きなだけで、告白するつもりもないのに。
周りの目も気になるし絶対に友達に相談なんかできない。
だから、忘れようとした。
存在事態を忘れることはできないから、せめてそれ以上好きにならないように距離をとろうとした。
目を合わせないように、君を探さないように。
それなのに…君は私の気持ちも知らずに話しかけてくる、関わろうとしてくる。
どうして…?
知ってるよ。
君が私のこと「推し」にしてたの。
他の女子と対応も話しかける回数も明らかに多いから。
君の特別になりたい私にとってそれは嬉しいことだけど、
とても複雑で、苦しくなる。
君に話しかけられる度に、嬉しいと苦しいの感情がぶつかり合ってうまく笑えない。
2日間話してなくて、いい感じに離れられてると思ってたのに。
「○○!ナイスショット!」
部活で急に声をかけられた。
しかも、褒められた。
点を決めた私以上に喜んだ顔をして。
集合写真のとき全然笑わないくせに、こういうときだけ見せる笑顔がずるい。
私だけに見せる笑顔であってほしいなんて彼女でもないのに思ってしまう。
本当にずるい人。
彼女がいるくせに、私を推しにして、私の心まで奪って、普段見せない笑顔まで見せて…。
好きになんかならなきゃよかった。
手放したくても、手放せない。
いや、手放したくないんだろうな。
心の境界線
君との距離は永遠に縮まることはないのだろうか。
この前はあんなに二人で笑ったのに、
今日、久しぶりに会ったら少しそっけない気がして。
これが心の境界線というものなのだろうか。