霜降る朝
ザクッザクッ
「ねぇー、見てー!霜ー!!」
はしゃぎながら霜を踏んで楽しそうに笑う友達。
今はもう冷えきった関係になってしまったけれど。
私が冷たくしたからかな?
でも、ごめんね。
もう、顔を見るだけで拒否してしまうくらい…嫌いになった。
余計な一言も、
人によって変わる態度も、
毎回同じ話してくるのも、
部活サボりがちなのも、
全部、全部、
嫌だ。
私が好きなもの食べてるとき、
「それ、美味しいの?なんか、まずそー」
「私それ嫌いなんだよねー」
て、言ってくるけど
人が好きで食べてるものに「まずそー」とか言うな!
女子とは普通に話すのに、男子と話してるの見てるとなんか声いつもと違うし、
少しねっとりした声でやだ。
ぶりっ子してる?
人の声とか否定したくないけど、たぶん誰がどう見ても何か違うなって分かるレベル。
自販機でミルクティー飲もうかなとか言ってたら
「わたしお茶系飲めないんだよねー」
だって、
知ってるよ、何回も聞いた。
ほうじ茶、緑茶、麦茶、紅茶、ミルクティー、抹茶。
好き嫌いがあるのはしょうがないと思うけど、一回でいいし。
部長の癖に、
「トレーニングで足痛いから休むね」
はぁ?
みんなトレーニングやってるんですけど?
足痛いとかいいながらみんな部活来てるんですけど?
部長だからって休んじゃだめではないけど、
サボりすぎ、
休みすぎ、
体力無さすぎ、
風邪引きすぎ、
免疫もうちょいつけて?
ザクッザクッ
なんか、思い出してしまった。
去年のこと。
ザクッザクッ
今日もきまずいなー。
手放した時間
君のことを想う時間を手放した
―――つもりだった。
好きになっちゃいけない人なんていないはずなのに。
誰を好きになろうが自由のはずなのに。
「彼女がいる」と聞いただけで悪いことをしている気分になる。
好きなだけで、告白するつもりもないのに。
周りの目も気になるし絶対に友達に相談なんかできない。
だから、忘れようとした。
存在事態を忘れることはできないから、せめてそれ以上好きにならないように距離をとろうとした。
目を合わせないように、君を探さないように。
それなのに…君は私の気持ちも知らずに話しかけてくる、関わろうとしてくる。
どうして…?
知ってるよ。
君が私のこと「推し」にしてたの。
他の女子と対応も話しかける回数も明らかに多いから。
君の特別になりたい私にとってそれは嬉しいことだけど、
とても複雑で、苦しくなる。
君に話しかけられる度に、嬉しいと苦しいの感情がぶつかり合ってうまく笑えない。
2日間話してなくて、いい感じに離れられてると思ってたのに。
「○○!ナイスショット!」
部活で急に声をかけられた。
しかも、褒められた。
点を決めた私以上に喜んだ顔をして。
集合写真のとき全然笑わないくせに、こういうときだけ見せる笑顔がずるい。
私だけに見せる笑顔であってほしいなんて彼女でもないのに思ってしまう。
本当にずるい人。
彼女がいるくせに、私を推しにして、私の心まで奪って、普段見せない笑顔まで見せて…。
好きになんかならなきゃよかった。
手放したくても、手放せない。
いや、手放したくないんだろうな。
心の境界線
君との距離は永遠に縮まることはないのだろうか。
この前はあんなに二人で笑ったのに、
今日、久しぶりに会ったら少しそっけない気がして。
これが心の境界線というものなのだろうか。
キンモクセイ
この匂い…キンモクセイだ。
もう、この季節か…。
君を好きになった時も、キンモクセイが咲く時期だったかな…?
ちょうど一年。
君に片想いして。
行かないでと、願ったのに
『待って…!行かないでっ!』
この一言が言えたところで、君は待ってくれるだろうか。
いや、待ってくれないよね。
だって、言えないんだもん、その一言が。
その代わりに、
「ずっと、待ってる。」
君が生きて帰って来てくれることを願って。
そんな悲しそうな顔しないでよ。
行かないでって言いたいけど、
そんなこと言ったら、君を困らせる。
だから、言えない。
「じゃあ、行ってくる…。元気でな。」
「うん…。」
行っちゃう…。待ってよ、ねぇ、待ってよ。
気がつけば君のもとに走り出して、
後ろから抱きついた。
「…っ、ごめん、わがままでごめん…。でも、たぶん後悔するから言うね。……行かないで…。」
なにも言わずに抱き締め返す君。
自然とあふれでてくる涙。
どのくらい時間がたっただろうか。
君が乗る予定の汽車が汽笛をならしながら来る。
顔を上げると、目に涙をためた君の顔がある。
「ごめんっ、ごめん…っ、一緒にいたいけど…けど…っ、行かなきゃダメなんだ。」
そう言って、手をはなす君。
そうだよね、君の使命だもんね。
御国を守るため…か。
ずっと、私のそばにいて守ってほしいなんて言えない。
「…うん、いってらっしゃい…!!」
無理矢理作った笑顔で君を見送る。
未来は大体想像できてる。
君はもう…。
君を乗せた汽車が見えなくなる。
――― 数年後
終わったよ…やっと。
君が守りたかった未来に私は生きてるよ。
たくさんの犠牲も出たけど、
だからこそ、最期まで生きるから。
まだ、そっちには行けないかな…?笑
でも、たまにね、
こんな時代に生まれてなければ、君と一生を添い遂げることができたのだろうか。
とか、思っちゃうんだよね。
出会えただけでも、幸せか…。