行かないでと、願ったのに
『待って…!行かないでっ!』
この一言が言えたところで、君は待ってくれるだろうか。
いや、待ってくれないよね。
だって、言えないんだもん、その一言が。
その代わりに、
「ずっと、待ってる。」
君が生きて帰って来てくれることを願って。
そんな悲しそうな顔しないでよ。
行かないでって言いたいけど、
そんなこと言ったら、君を困らせる。
だから、言えない。
「じゃあ、行ってくる…。元気でな。」
「うん…。」
行っちゃう…。待ってよ、ねぇ、待ってよ。
気がつけば君のもとに走り出して、
後ろから抱きついた。
「…っ、ごめん、わがままでごめん…。でも、たぶん後悔するから言うね。……行かないで…。」
なにも言わずに抱き締め返す君。
自然とあふれでてくる涙。
どのくらい時間がたっただろうか。
君が乗る予定の汽車が汽笛をならしながら来る。
顔を上げると、目に涙をためた君の顔がある。
「ごめんっ、ごめん…っ、一緒にいたいけど…けど…っ、行かなきゃダメなんだ。」
そう言って、手をはなす君。
そうだよね、君の使命だもんね。
御国を守るため…か。
ずっと、私のそばにいて守ってほしいなんて言えない。
「…うん、いってらっしゃい…!!」
無理矢理作った笑顔で君を見送る。
未来は大体想像できてる。
君はもう…。
君を乗せた汽車が見えなくなる。
――― 数年後
終わったよ…やっと。
君が守りたかった未来に私は生きてるよ。
たくさんの犠牲も出たけど、
だからこそ、最期まで生きるから。
まだ、そっちには行けないかな…?笑
でも、たまにね、
こんな時代に生まれてなければ、君と一生を添い遂げることができたのだろうか。
とか、思っちゃうんだよね。
出会えただけでも、幸せか…。
11/3/2025, 10:37:26 AM