Red,Green,Blue
空は高く蒼く、
木々の葉は翠に揺れ、
そして…。
貴方の生命は紅くて。
私は、ずっと孤独でした。
人の温もりも知らず、
世の中の色に染まれず、
社会の外で生きてきて。
そんな私に、
救いの手を差し伸べて、
微笑みかけてくれた、貴方。
貴方に出逢って、
空の青さや木々の緑が、
こんなに美しいと、
知ったのです。
私の世界は、
貴方がくれたもの。
私の全ては、貴方のもの。
なのに。
貴方は私だけのもの、
ではなかったのです。
だから。
私は、貴方を世界から奪い、
私だけのものにしました。
鈍色の刃が、貴方の胸を貫き、
貴方も私も朱に染まります。
空は蒼く、木々は翠。
貴方から流れ出る血潮は、
…朱。
あか、みどり、あお。
Red,Green,Blue。
全て混ざれば、白。
…永遠となる色。
仲間になれなくて
子供の頃は、
いつも一緒に遊んで。
俺の隣で笑ってた。
なのに。
気が付けば、君は、
俺の知らない仲間に囲まれ、
楽しそうに笑ってる。
俺と君。
少しの隔たりが、
もう超えられない河となって、
2人の間に横たわってる。
君に手を伸ばしたいと、
君に触れたいと願っても、
もう、届かない。
そんな気になる。
だって。
俺は後悔の鎖に縛られ、
過去に囚われたまま、
灰色の世界に留まっているのに、
君は世間の荒波に、
藻掻きながら、
必死で生きているんだから。
仲間になれなくて。
友達になれなくて。
痛む心を抱えて、
遠くから君を眺めてる。
君と友達で居られれば、
それで、いいって、
どうしても思えないから。
雨と君
静かに雨が降る。
雨音だけが響く夜更け。
君の元を尋ねる。
君は悲しげな瞳で、
私に微笑みかけてくれるから。
私は作り物の笑顔で、
微笑み返す。
君に手を伸ばす。
君は確かに此処に居るのに、
君の心は罅割れだらけ。
何処か掴み所がなくて、
まるで雨の様に指の隙間から、
零れ落ちていくんだ。
君の心の中に、
私は居るのかな?
せめて、この夜の一時、
君の心の隙間に居られたら、
それで満足だから。
君の温もりは、
静かな雨のように優しくて。
でも、君の瞳には、
雨の雫が浮かんで消える。
雨と君。
夜が明け、雲が晴れたら、
触れる事は叶わないから。
…だから、今だけは
私の隣に居て欲しい。
誰もいない教室
夕暮れが迫る、
誰もいない教室。
貴方の教え子も、
貴方もいない教室。
酷く静かな、空間。
もし、私が。
ずっとずっと、
貴方の教え子で居られたら、
貴方は私だけを、
見続けてくれたのですか?
自分の名前もまともに書けない、
幼いままの私であったなら、
今でも尚、貴方は、
幼い貴方の教え子達のように、
繰り返し、私の手を取り、
文字を教えてくれましたか?
そんなことを言ったとて、
きっと貴方は、
少し困った顔をして、
視線と話を逸らせたでしょう。
だから。
貴方が、永遠に、
私だけを見てくれるように、
他の教え子に、
視線や心を向けないように、
貴方の時間を止めました。
私が銀色の刃を握り、
貴方の胸に、
真紅な薔薇を咲かせると、
貴方の生命の赤が、
止め処なく溢れ出し、
私の身体を朱に染めました。
誰もいない教室。
この教室に、貴方の声は、
二度と響きません。
だって、貴方は、
私と二人だけの世界で、
私だけの「先生」に、
なったのですから。