誰もいない教室
夕暮れが迫る、
誰もいない教室。
貴方の教え子も、
貴方もいない教室。
酷く静かな、空間。
もし、私が。
ずっとずっと、
貴方の教え子で居られたら、
貴方は私だけを、
見続けてくれたのですか?
自分の名前もまともに書けない、
幼いままの私であったなら、
今でも尚、貴方は、
幼い貴方の教え子達のように、
繰り返し、私の手を取り、
文字を教えてくれましたか?
そんなことを言ったとて、
きっと貴方は、
少し困った顔をして、
視線と話を逸らせたでしょう。
だから。
貴方が、永遠に、
私だけを見てくれるように、
他の教え子に、
視線や心を向けないように、
貴方の時間を止めました。
私が銀色の刃を握り、
貴方の胸に、
真紅な薔薇を咲かせると、
貴方の生命の赤が、
止め処なく溢れ出し、
私の身体を朱に染めました。
誰もいない教室。
この教室に、貴方の声は、
二度と響きません。
だって、貴方は、
私と二人だけの世界で、
私だけの「先生」に、
なったのですから。
9/7/2025, 6:52:28 AM