霜月 朔(創作)

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7/8/2025, 7:50:33 AM

願い事



貴方の願い事は、何ですか?
私の願い事は、ただ一つ。
私の全てが貴方のものとなり、
貴方の全てが私のものとなる事。
…ただ、それだけです。

余りに冷徹な社会は、
私の様な歪な人間を、
社会は機械的に排除し、
人々は容赦無く傷付けます。

そして。
私の様な社会から、
弾き出された人間に、
手を差し伸べる貴方にも、
世の中は残酷で、
差別の目を向けるのです。

こんな醜い世の中に生きるには、
私は余りに傷だらけ過ぎて、
貴方は余りに優し過ぎたのです。

貴方の心は、
世間から傷付けられ、
血を流し、悲鳴を上げていたのに、
私を悪意の刃から護り、
笑顔を向けてくれていました。

でも。
もう、頑張らなくて良いんです。

この世には、
幸せも安らぎもありません。
ならば、
二人で笑い合える場所に、
一緒に行きましょう。

何も怖くありません。
私に身も心も委ねて下さい。
貴方の呼吸も鼓動も温もりも、
全て私の物にしますから。

貴方の願い事は、何ですか?
私の願い事は、ただ一つ。
私の全てが貴方のものとなり、
貴方の全てが私のものとなる事。
…ただ、それだけでした。

7/7/2025, 6:59:17 AM

空恋

7/6/2025, 6:33:36 AM

波音に耳を澄ませて



君が私の元を去って。
季節は何度も巡った。
それでも忘れられない、
君の面影。

二人で海を見たのは、
もう、何年も前の事なのに、
私の心は、
あの日の海の蒼に、
囚われたままなんだ。

波音に耳を澄ませて、
君を思い出す。
君の瞳、君の声、
君の鼓動、君の温もり。

忘れられない君の、
抜け殻になった想い出を、
腕一杯に抱え、
一人、海を眺める。

ふと、小さな波間から、
君の控えめな笑い声が、
聴こえた気がして、
顔を上げ、君を探す。

だけど、見えるのは、
静かに揺れる水平線と、
哀しい程に蒼い海。
遠くから聴こえる、
誰かが燥ぐ楽しげな声。

君が去ったあの日から、
私の心はずっと空っぽ。
ただ、潮風だけが、
私の隣に居るだけ。

波音に耳を澄ませて、
小さな願いを、海に託す。

どうか。もう一度。
君の笑顔が見られますように。
例え、その微笑みが、
私の為…ではなくても。

7/5/2025, 8:21:43 AM

青い風

7/4/2025, 7:27:09 AM

遠くに行きたい



哀しい程に青い空を見上げ、
俺は今日もそっと呟く。
『遠くに行きたい。』
…と。

遠くに行きたい。
貴方を亡くしてからの、
俺の口癖。

どんなに辛い事が起きても、
夜は訪れ、陽は登る。
世の中は澄まし顔で、
何も変わらず廻り続ける。

だけど、俺の心は、
大切な貴方を亡くした日から、
動けずにいるんだ。

部屋の中には、
貴方との想い出が溢れ、
ふと、背後から、
貴方の声が聞こえそうで、
耳を澄ませてしまう。

もう一度、貴方に会いたい。

もう枯れた筈の涙が溢れ出し、
胸が灼けるように疼いて、
部屋を飛び出し、
街を彷徨う。

だけど、
人混みの中に、
貴方の姿を探してしまう。

街は少しずつ変わるのに、
俺は貴方と過ごした頃から、
何も変わらず、
ただ、貴方の背中を探し、
必死に追い駆けようとする。

貴方の居ない、
この世界に、
どれ程の価値があるのか?

遠くに行きたい。
…貴方の側に行きたい。


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