遠くに行きたい
哀しい程に青い空を見上げ、
俺は今日もそっと呟く。
『遠くに行きたい。』
…と。
遠くに行きたい。
貴方を亡くしてからの、
俺の口癖。
どんなに辛い事が起きても、
夜は訪れ、陽は登る。
世の中は澄まし顔で、
何も変わらず廻り続ける。
だけど、俺の心は、
大切な貴方を亡くした日から、
動けずにいるんだ。
部屋の中には、
貴方との想い出が溢れ、
ふと、背後から、
貴方の声が聞こえそうで、
耳を澄ませてしまう。
もう一度、貴方に会いたい。
もう枯れた筈の涙が溢れ出し、
胸が灼けるように疼いて、
部屋を飛び出し、
街を彷徨う。
だけど、
人混みの中に、
貴方の姿を探してしまう。
街は少しずつ変わるのに、
俺は貴方と過ごした頃から、
何も変わらず、
ただ、貴方の背中を探し、
必死に追い駆けようとする。
貴方の居ない、
この世界に、
どれ程の価値があるのか?
遠くに行きたい。
…貴方の側に行きたい。
7/4/2025, 7:27:09 AM