裏返し
お前は、ボクの顔を見ると、
直ぐに説教するし、
まるでボクの行動を、
見張ってるみたいで。
ボクは決して真面目じゃない。
でも幾ら、
ボクが出来が悪いからって、
何時も何時も、
目くじらを立てなくてもいいのに。
だから。ボクも。
お前の顔を見る度、
悪態しか出てこなくて、
お前の事を、
ウザいとか、嫌いだとか、
言っちゃう。
だけど、ホントは分かってる。
ウザいは構っての裏返し。
嫌いは好きの裏返し。
だから。
お前のしつこい説教も、
ボクへの愛情の裏返し。
…だと、いいんだけど、な。
鳥のように
もしも私が、
鳥のように、空を飛べたなら。
高い空の上から、
街を見下ろしてみたいです。
きっと、
普段、私を蔑む人々が、
蟻のように小さく見えるでしょう。
もしも私が、
鳥のように、美しく囀る事が出来たなら。
きちんと声を出して、
歌を歌ってみたいです。
もしかしたら、
人を惹き付ける程に、
上手に歌う事ができるかも知れません。
もしも私が、
鳥のように、身軽だったなら。
高い木の上で、
ゆっくりと休んでみたいです。
きっと吹き抜ける風が、
心地良いに違いありません。
もしも、私が、
鳥のように、何者からも自由だったなら。
私は、何をするのでしょうか?
生命続く限り、羽ばたき続けて、
地の果てを目指して、
飛んでいくのでしょうか?
それとも、
空をどんどん登って行って、
天に居ると云われる、
神に刃を向けるのでしょうか?
さよならを言う前に
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
私の名前を呼んで欲しかった。
貴方のその、
少し低くて、とても優しい、
何処か照れた様な声で。
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方の瞳に映る、
私を見たかった。
貴方の瞳はもう二度と、
私を映す事は無いだろうから。
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方に触れたかった。
私の隣に居てくれた、
貴方のその温もりを、
記憶に刻み込みたかった。
さよならを言う前に、
貴方の事が嫌いになりたかった。
そうじゃないと、私はきっと、
ずっとずっと、
貴方の事を愛し続けてしまうから。
ねぇ。
さよならを言う前に。
最後にもう一度だけ、言わせて。
『貴方を愛してる。』
空模様
今日は、朝から暑いなって、
そんな晴天で。
空いっぱいに、夏の青空が、
広がってた。
キラキラ太陽に、
綿飴みたいな入道雲。
何処までも高い青い空。
こんな日だから。
何かいい事あるかなって、
思ってたけど。
世の中そんなに甘くなくて。
仕事はトラブル続きだし。
憧れの先輩には、
恋人が居ることを知っちゃうし。
夕方にはすっかり意気銷沈。
帰り道、空を見上げる。
夕焼け間近の空が、
あっという間に、掻き曇る。
そして、大粒の雨粒が、
バタバタと落ちてきた。
夕立だ。
傘は無かったけど、
何処かに雨宿りする気にも、
走る気にもなれなくて。
まるで、俺の心みたいな、
…空模様。
びしょ濡れの俺は、
ポツリと呟いた。
鏡
鏡に映るのは、
血に塗れた、醜い私。
思わず目を背け、
鏡を叩き割りそうになる衝動を、
必死に堪えます。
そして、鏡に映る私に、
私は冷たく問い掛けます。
こんなにも罪深い私が、
何故、生きているのですか?
私は、私が生きる為に、
見捨てた人々の屍の山の上に、
立っているのです。
私が、生きる事を諦めれば、
死なずに済んだ人々。
私はそんな人々を犠牲にして、
生きているのです。
『貴方さえいなければ、
死なずに済んだのに。』
鏡に映る私に向けて、
私は被害者の想いを代弁をします。
『貴方の生命ある限り、
その罪の重さに苦しみなさい。』
そして、鏡の向こうの罪人に、
私はそう断罪するのです。