霜月 朔(創作)

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さよならを言う前に



さよならを言う前に、
もう一度だけ、
私の名前を呼んで欲しかった。
貴方のその、
少し低くて、とても優しい、
何処か照れた様な声で。

さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方の瞳に映る、
私を見たかった。
貴方の瞳はもう二度と、
私を映す事は無いだろうから。

さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方に触れたかった。
私の隣に居てくれた、
貴方のその温もりを、
記憶に刻み込みたかった。

さよならを言う前に、
貴方の事が嫌いになりたかった。
そうじゃないと、私はきっと、
ずっとずっと、
貴方の事を愛し続けてしまうから。

ねぇ。
さよならを言う前に。
最後にもう一度だけ、言わせて。

『貴方を愛してる。』

8/20/2024, 8:30:17 PM