鳥のように
もしも私が、
鳥のように、空を飛べたなら。
高い空の上から、
街を見下ろしてみたいです。
きっと、
普段、私を蔑む人々が、
蟻のように小さく見えるでしょう。
もしも私が、
鳥のように、美しく囀る事が出来たなら。
きちんと声を出して、
歌を歌ってみたいです。
もしかしたら、
人を惹き付ける程に、
上手に歌う事ができるかも知れません。
もしも私が、
鳥のように、身軽だったなら。
高い木の上で、
ゆっくりと休んでみたいです。
きっと吹き抜ける風が、
心地良いに違いありません。
もしも、私が、
鳥のように、何者からも自由だったなら。
私は、何をするのでしょうか?
生命続く限り、羽ばたき続けて、
地の果てを目指して、
飛んでいくのでしょうか?
それとも、
空をどんどん登って行って、
天に居ると云われる、
神に刃を向けるのでしょうか?
さよならを言う前に
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
私の名前を呼んで欲しかった。
貴方のその、
少し低くて、とても優しい、
何処か照れた様な声で。
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方の瞳に映る、
私を見たかった。
貴方の瞳はもう二度と、
私を映す事は無いだろうから。
さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方に触れたかった。
私の隣に居てくれた、
貴方のその温もりを、
記憶に刻み込みたかった。
さよならを言う前に、
貴方の事が嫌いになりたかった。
そうじゃないと、私はきっと、
ずっとずっと、
貴方の事を愛し続けてしまうから。
ねぇ。
さよならを言う前に。
最後にもう一度だけ、言わせて。
『貴方を愛してる。』
空模様
今日は、朝から暑いなって、
そんな晴天で。
空いっぱいに、夏の青空が、
広がってた。
キラキラ太陽に、
綿飴みたいな入道雲。
何処までも高い青い空。
こんな日だから。
何かいい事あるかなって、
思ってたけど。
世の中そんなに甘くなくて。
仕事はトラブル続きだし。
憧れの先輩には、
恋人が居ることを知っちゃうし。
夕方にはすっかり意気銷沈。
帰り道、空を見上げる。
夕焼け間近の空が、
あっという間に、掻き曇る。
そして、大粒の雨粒が、
バタバタと落ちてきた。
夕立だ。
傘は無かったけど、
何処かに雨宿りする気にも、
走る気にもなれなくて。
まるで、俺の心みたいな、
…空模様。
びしょ濡れの俺は、
ポツリと呟いた。
鏡
鏡に映るのは、
血に塗れた、醜い私。
思わず目を背け、
鏡を叩き割りそうになる衝動を、
必死に堪えます。
そして、鏡に映る私に、
私は冷たく問い掛けます。
こんなにも罪深い私が、
何故、生きているのですか?
私は、私が生きる為に、
見捨てた人々の屍の山の上に、
立っているのです。
私が、生きる事を諦めれば、
死なずに済んだ人々。
私はそんな人々を犠牲にして、
生きているのです。
『貴方さえいなければ、
死なずに済んだのに。』
鏡に映る私に向けて、
私は被害者の想いを代弁をします。
『貴方の生命ある限り、
その罪の重さに苦しみなさい。』
そして、鏡の向こうの罪人に、
私はそう断罪するのです。
いつまでも捨てられないもの
私の机の引き出しの奥には、
ひっそりと小さな小箱がある。
その中には、
二度と指に嵌める事のない、
少しだけ古びた指輪が、
一つだけ、入っている。
苦々しく悲しい、
大切な想い出に纒わる品。
何時までも捨てられない物。
…それは、
嘗ての恋人との、
ペアリングの片割れ。
彼との関係は、
ずっと前に終わった。
そして、
元に戻る事は無いだろう。
そう。私がどんなに、
もう一度、彼とやり直したいと、
願ったとしても、
この願いは、叶う筈がない。
にも拘らず。
情けなくも、私は、
この想い出の片割れを、
ずっと、棄てられずにいるんだ。