霜月 朔(創作)

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8/20/2024, 8:30:17 PM

さよならを言う前に



さよならを言う前に、
もう一度だけ、
私の名前を呼んで欲しかった。
貴方のその、
少し低くて、とても優しい、
何処か照れた様な声で。

さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方の瞳に映る、
私を見たかった。
貴方の瞳はもう二度と、
私を映す事は無いだろうから。

さよならを言う前に、
もう一度だけ、
貴方に触れたかった。
私の隣に居てくれた、
貴方のその温もりを、
記憶に刻み込みたかった。

さよならを言う前に、
貴方の事が嫌いになりたかった。
そうじゃないと、私はきっと、
ずっとずっと、
貴方の事を愛し続けてしまうから。

ねぇ。
さよならを言う前に。
最後にもう一度だけ、言わせて。

『貴方を愛してる。』

8/19/2024, 4:55:39 PM

空模様



今日は、朝から暑いなって、
そんな晴天で。
空いっぱいに、夏の青空が、
広がってた。

キラキラ太陽に、
綿飴みたいな入道雲。
何処までも高い青い空。

こんな日だから。
何かいい事あるかなって、
思ってたけど。
世の中そんなに甘くなくて。

仕事はトラブル続きだし。
憧れの先輩には、
恋人が居ることを知っちゃうし。
夕方にはすっかり意気銷沈。

帰り道、空を見上げる。
夕焼け間近の空が、
あっという間に、掻き曇る。
そして、大粒の雨粒が、
バタバタと落ちてきた。

夕立だ。
傘は無かったけど、
何処かに雨宿りする気にも、
走る気にもなれなくて。

まるで、俺の心みたいな、
…空模様。

びしょ濡れの俺は、
ポツリと呟いた。

8/18/2024, 6:41:31 PM





鏡に映るのは、
血に塗れた、醜い私。
思わず目を背け、
鏡を叩き割りそうになる衝動を、
必死に堪えます。

そして、鏡に映る私に、
私は冷たく問い掛けます。
こんなにも罪深い私が、
何故、生きているのですか?

私は、私が生きる為に、
見捨てた人々の屍の山の上に、
立っているのです。

私が、生きる事を諦めれば、
死なずに済んだ人々。
私はそんな人々を犠牲にして、
生きているのです。

『貴方さえいなければ、
死なずに済んだのに。』
鏡に映る私に向けて、
私は被害者の想いを代弁をします。

『貴方の生命ある限り、
その罪の重さに苦しみなさい。』
そして、鏡の向こうの罪人に、
私はそう断罪するのです。

8/17/2024, 8:10:52 PM

いつまでも捨てられないもの


私の机の引き出しの奥には、
ひっそりと小さな小箱がある。

その中には、
二度と指に嵌める事のない、
少しだけ古びた指輪が、
一つだけ、入っている。

苦々しく悲しい、
大切な想い出に纒わる品。
何時までも捨てられない物。

…それは、
嘗ての恋人との、
ペアリングの片割れ。

彼との関係は、
ずっと前に終わった。
そして、
元に戻る事は無いだろう。

そう。私がどんなに、
もう一度、彼とやり直したいと、
願ったとしても、
この願いは、叶う筈がない。

にも拘らず。
情けなくも、私は、
この想い出の片割れを、
ずっと、棄てられずにいるんだ。

8/16/2024, 7:26:43 PM

誇らしさ



ホントに、俺って。
情けないな。

君は俺の事を、
気遣いの出来る、
優しい人間だって、
褒めてくれるけど。

何時も真っ直ぐで、
強い心を持ってる君と違って。
俺は、単に決断力が無くて、
優柔不断なだけ。

だから。
何時も君の隣に立っている。
そんな、誇らしささえ、
俺には、分不相応な気がして。

俺は、半ば君の影に隠れる様に、
そっと一歩下がって、
君と並ぶ事を避けてしまう。

君の隣に居られる事。
俺の唯一の誇らしさ。
これだけは、
絶対失いたくないのに…。

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