霜月 朔(創作)

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8/15/2024, 6:52:41 PM

夜の海


海辺の夏の夜。
君と二人で、浜辺を歩く。

私達の頭上には、
煌めく夏の星が瞬き、
眼の前に広がる暗い海の上には、
青白い月が、月の光の道を作る。

夜の海を見ていると、
その深い青闇色に、
吸い込まれそうになり、
このまま夜の海の波間に、
消えてしまいたい。
そんな想いに駆られる。

この衝動に抗わなければ、
私は楽になれるだろう。
だが。
繋いだ君の手の温もりが、
私をこの世に繋ぎ止めていた。

ふと、
貴方が一緒に居てくれるなら、
私は何処へ行っても幸せです。
そう言って、君は微笑んだ。

私は、繋いでいた手に力を込めた。
例え二人の身に何が起きようとも、
君の手を決して離さぬ様に、と。

夜の海は、静かな波の音を立て、
そっと、私達を呼んでいる。
…そんな気がした。

8/14/2024, 7:02:11 PM

自転車に乗って


街の近くの高台に登ると、
遠くに山が見える。
あの山の向こうにも、
街が広がっている筈なんだ。

その街は、
俺の知らない人が、
何気ない日常を送る街。
誰かにとって、
とても大切な故郷。
そして、別の誰かにとっての、
大切な思い出の地。

今日は、余りに空が、
青くて綺麗だから。
俺は思わず、
今の俺の日常を、
全てかなぐり捨てて、
自転車に乗って、
山を超えて、
知らない街まで、
走って行ってしまいたい…。
そんな気分になる。

だけど。解ってる。
俺が本当に行きたいのは、
山の向こうの街じゃなくて、
貴方のいる、
空の上なんだって。

貴方に会いに行きたい。
何処までも蒼い空の、
ずっとずっと上まで。
自転車に乗って、
貴方を探しに行きたいんだ。

8/13/2024, 5:37:24 PM

心の健康


身体に痛い所は有りません。
怪我はしていません。
湿疹も有りません。

身体に怠い所は有りません。
熱は有りません。
咳や鼻水も出ません。

身体に違和感は有りません。
目眩も頭痛も有りません。
寒気も有りません。

お腹は痛く有りません。
吐き気も有りませんし、
お腹を壊したりもしていません。

なのに。
何だか元気が出ないのです。
身体は健康なのに、
心は健康ではないみたいです。

心の健康は、
どうしたら手に入るのですか?

お願いです。
私の手を握っていて下さい。
ずっと私の側に居ると言って下さい。
私を見捨てないで下さい。
私は、貴方無しでは、
生きられないのですから…。

8/12/2024, 4:59:05 PM

君の奏でる音楽


音楽を聞くのが好きだった。
所謂、クラシックって言われる曲。
でも、オーケストラとか、
立派なものじゃなくて、
バイオリンとかピアノとかの、
ソロ演奏が特に好きだった。

そう。
私は音楽を聞くことが、
好き『だった』。

今は、音楽を聞かなくなった。
だって。音楽を聞くと、
私の元を去ってしまった、
君との思い出を、
思い出しちゃうから。

音楽を聞く事だけでなく、
奏でる事も好きだった、君。
私は、君が奏でる音楽も、
音楽を奏でる君も、
本当に、本当に、好きだったんだ。

もう一度。
君の奏でる音楽が聞きたい。
君と私が恋人だったあの頃みたいに。
私だけの為に、君が奏でる音楽が。

8/11/2024, 6:23:56 PM

麦わら帽子


ある夏の日。
久しぶりに見かけた、
麦わら帽子を被った幼子。

最早、麦わら帽子は、
過去の遺物なのでしょうか。
街中で見掛ける機会は、
殆ど無くなりました。

私が幼い頃は、
夏になると良く見かけた、
夏の風物詩、麦わら帽子。

私が幼い日に被っていたのは、
所々、解れのある、
飾り気の無い麦わら帽子。

夏の陽射しを避けるには、
余りに頼りなくも、
懐かしい、そのシルエット。
思い出すと、何だか、
悲しくなるのは、何故でしょう?

大人になった今。
麦わら帽子を被って、
夏の太陽の下で、
一日中、虫を追い回すには、
私は余りに擦れてしまいました。

麦わら帽子が似合った、あの頃。
帰りたくても帰れない、
懐かしい故郷。遠い記憶。

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