霜月 朔(創作)

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7/28/2024, 3:57:56 PM

お祭り


今日は街の夏祭り。
夜には真っ暗になる街の広場も、
今夜は屋台の明かりが灯る。
沢山の見物客の声と祭囃子が、
祭りの夜を更に盛り上げてる。

だけどボクは。
部屋のベッドに寝転んで、
風に乗ってくる愉しげな声を、
聞いてる事しか出来ない。

ボクが元気だったら、
皆とお祭りに行けたんだろうな。
あーあ。
りんご飴食べて、盆踊りしたかったな。

そんな事を独り言ちてると、
不意に部屋のドアが開いて、
お祭りに行った筈の友達が入ってきた。

そして。
体調が悪いのだから、
これで我慢しなさい、と。
紫色の可愛いヨーヨーと、
大きくて真っ赤なりんご飴を、
説教付きでボクにくれた。

きっとコイツだって。
他の友達と、お祭りをもっと、
楽しみたかった筈なのに。
ボクの為に、途中で帰って来たんだ。

でも、ありがとうって、
素直に言えなくて。
ボクは、態とぶっきらぼうに、
病人にりんご飴とか、どうなんだよ。
と、文句を言って、
赤くなった目を隠す様に、
りんご飴に齧り付いた。

7/27/2024, 2:59:17 PM

神様が舞い降りてきて、こう言った。



ある日。
神様が舞い降りてきて、
こう言った。

『わたしの目には、
あなたは高価で尊い。
わたしはあなたを愛している。』

俺は思った。
…巫山戯るな、と。

そんな耳触りの良い事を、
それらしく言っておいて、
結局。何もしてはくれない。
神様の有り難い御言葉じゃ、
腹は膨れない。

それならいっそ、
悪魔の方がまだマシだ。
少なくとも彼奴等は、
むかつく綺麗事を言わない。

だから、俺は。
神に背き、悪魔を騙し、糧を得る。
…それで、いい。

7/26/2024, 5:58:35 PM

誰かのためになるならば



こんな私など、
生きている価値など無い。
常々そう思っている。

しかし、生きたいと願っても、
生きられなかった人を思えば、
天に与えられ、今尚ある生命を、
無下にするのも躊躇われる。

もしも。
誰かの為になるならば、
私は、この生命を差し出そう。
生きている価値もない、
私の様な人間でも
人様の役に立てる、
数少ない機会だろうから。

私の生命と引き換えに、
誰かの生命が救われるなら、
こんな役立たずな私でも、
生きた意味があった事になる。

だが。
出来ることなら。
『誰か』の為に、
ではなく、
『大切な人』の為に、
この生命を散らせたい。

君の為になるならば、
この生命など、
惜しくも何ともないから、ね。

7/25/2024, 4:26:53 PM

鳥かご


鳥籠の中の小鳥は、
まるで囚われの姫君の様で、
可哀想だと、思っていた。

だけど。
鳥籠から飛び出したとしても、
外は、余りに危険だらけで、
小鳥は無惨な死を遂げるだけだろう。

一瞬の自由を求め、
その生命を捧げるのか。
生命を永らえる為に、
不自由を受け入れるのか。

広い世界を知らなければ、
狭い鳥籠の中が世界の全て。
鳥籠の中と鳥籠の外。
どちらが幸せかなんて、
俺には解らない。

…だから、俺は。
外の世界なんか、知らない振りをして、
餌だけは与えてくれる飼主の下で、
鳥籠の中でくるくると踊る、
青い小鳥で居ようと思う。

7/24/2024, 4:51:55 PM

友情


いつもお前は、俺の隣にいてくれて。
いつの間にか、俺には、
それが当たり前になっていて。

俺は何処か自信なさげなお前を励まし、
お前は常に忙しい俺を支えてくれる。
困った時には、お互いにフォローして、
時にはライバルとして競い合う。
友情とは、素晴らしい。
俺たちは当にそんな関係。

そして、お前は。
優しく微笑んで、
何故か少しだけ恥ずかしそうに、
俺に言うんだ。
…君は、大切な親友だから。
と。

親友。友情。
それは素晴らしく、
だが、時には残酷な言葉だ。

何故なら、俺は。
お前と親友以上の関係になりたいと、
密かに思い続けているのだから。


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