ルール
ボクより賢くて、いろいろ出来るからって。
いつだって、お前は、
ボクに上から目線で接してきて、
なんか偉そうにしてて。
ホントは、きっとボクの気持ちになんて、
お前は、とっくに気付いてて。
このまま放っておいても、
どうせ、ボクが痺れを切らせて、
自分から思いを打ち明けるだろうって。
高を括ってるんだろうけど。
だけど。
お前の思い通りなんかには、させない。
もっと、お前を焦らせて、
本気でボクを捕まえたいって、
思わせるように…。
ルール違反な所まで、近づいて。
ルール違反な事まで、踏み込んで。
お前の立場なんか、考えてやらないから。
ルールを守ろうとする、お前には、
真似出来ない様な事だって、
ボクは余裕でやってみせる。
…だって。
ちゃんとルールを守ってたら、
お前には絶対勝てないから。
今日の心模様
今日は朝から気分が良かった。
何故かというと…。
朝ご飯が、フレンチトーストだったから。
そんな、単純な理由で、
俺は、ご機嫌だった。
そんな日だから。
いつもは鬱陶しいと思う、
あいつのお節介にも、
今日は、何だか、
少しは応じてやってもいいかなって。
あいつは、今日も変わらず、
俺に微笑みかけてきて、
まるで子供の面倒を見る様に、
俺の世話をしようとする。
俺を見るあいつは、何時も、
何だかマシュマロみたいに、
ふわふわしてて、甘過ぎて。
それが余りに気恥ずかしくて、
あいつの前から逃げ出したくなるのに。
今日は、少しだけ。
悪い気はしなかった。
今日の心模様は、
フレンチトーストみたいに、
ベタベタに甘くって。
マシュマロみたいに、
ふわふわっと甘くって。
偶には、こんな日も有りかな?
俺は、あいつの笑顔に包まれ、
少し頬を朱に染めながら、
ふと、思った。
たとえ間違いだったとしても
あの子は私を見詰めていた。
哀れなモノを見るような瞳で。
あの子の手にはナイフが握られている。
綺麗に研がれたそのナイフには、
一点の曇りもなかった。
あの子は、私を助けようとしているのだろう。
この汚れきった世の中に絶望し、
過去の過ちと後悔に雁字搦めになって、
日々呻き声を隠して生きている私を、
その手に握られた、刃によって、
解き放とうとしているのだ。
あの子の手に握られたナイフは、
私の身体に吸い込まれるように、
突き立てられた。
そして、
あの子は、泣き笑いの様な笑顔を浮かべた。
私の身体を、あの子の手を、辺りの床を、
私の罪の赤色が、染めていく。
私は泥人形の様に崩れ落ち、
次第に五感が失われていく。
私はあの子に、微笑みかけた。
『ありがとう』という言葉は、
声にはならなかった。
あの子の刃を受けたこと。
それが、たとえ間違いだったとしても、
後悔はしない。
雫
ぽつり
ぽつり
雫が落ちる。
気が付くと、お前は俺の側に居た。
俺と目が合うと、
ぽつりと、一言呟いて、姿を消す。
馴れ馴れしく近付いては来ない。
それでも、
何となく居場所の無い俺を、
さり気なくフォローする。
そして、
俺が礼を言う隙さえ与えず、
お前は、俺の元を離れていく。
そんな些細な事を、
お前は、毎日のように続けた。
ぽつり、ぽつりと、
雫が落ちる様に。
気が付けば、
俺はお前を受け入れていた。
俺の心の壁を打ち破った奴は、
お前が、初めてだ。
雨粒が岩を穿つが如く。
お前の小さな気遣いが、
俺の心の壁に穴を開けたのだろう。
そして、今日も。
俺は、素知らぬ顔をして、
お前が落としてくれる、
雨粒程の優しさを享受する。
ぽつり
ぽつり
雫が落ちる。
何もいらない
貴方が目覚めてくれるなら。
お前がずっと笑ってくれるなら。
お前が俺の背中を護ってくれるなら。
何もいらない。
お前が隣に居てくれるなら。
君の隣に居られるなら。
このまま一緒にいられるなら。
オレだけを見ていてくれるなら。
何もいらない。
君が私を赦してくれるなら。
貴方を見守る事を赦してくれるなら。
ボクの事をずっと見守ってくれるなら。
何もいらない。
もう一度、私の手を取ってくれるなら。
こんな私でも受け入れてくれるなら。
俺の成長を待っていてくれるなら。
何もいらない。
これからの人生、一緒に歩んでくれるなら。
貴方が私を導いてくれるなら。
この先、明るい未来があるならば。
何もいらない。
願いが叶うなら。
他には…何もいらない。