雫
ぽつり
ぽつり
雫が落ちる。
気が付くと、お前は俺の側に居た。
俺と目が合うと、
ぽつりと、一言呟いて、姿を消す。
馴れ馴れしく近付いては来ない。
それでも、
何となく居場所の無い俺を、
さり気なくフォローする。
そして、
俺が礼を言う隙さえ与えず、
お前は、俺の元を離れていく。
そんな些細な事を、
お前は、毎日のように続けた。
ぽつり、ぽつりと、
雫が落ちる様に。
気が付けば、
俺はお前を受け入れていた。
俺の心の壁を打ち破った奴は、
お前が、初めてだ。
雨粒が岩を穿つが如く。
お前の小さな気遣いが、
俺の心の壁に穴を開けたのだろう。
そして、今日も。
俺は、素知らぬ顔をして、
お前が落としてくれる、
雨粒程の優しさを享受する。
ぽつり
ぽつり
雫が落ちる。
4/21/2024, 1:44:46 PM