霜月 朔(創作)

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4/5/2024, 12:56:47 PM

星空の下で


人は死んだら、その魂は天に輝く星になる。
そんな伝承を、聞いた事があります。

でも、それが本当なら、
私が殺めてきた人々は、輝く星々となって、
毎夜毎夜、遠い空の上から、
私を怨みがましく見下ろしている…と言う事。

罪を重ねてきた私は、
陽の射す場所に居るに相応しくない人間だと、
陽の光を避ける様に、日陰を歩き、
ひっそりと生きて来ましたが、
数々の星の煌く、星空の下もまた、
私には相応しくない場所なのです。

太陽の元も星空の下も。
私が居てはいけない場所。
そんな、血に汚れた私でも、
生きる事を赦される場所は、
何処なのでしょうか…。

しかし。
こんな私に赦されるのであれば、
私は死した後、星となって、
天から、貴方を見守りたいのです。

星空の下で。
私は、密やかに願います。
…貴方の幸せを。

4/4/2024, 1:38:02 PM

それでいい


正直に言えば、色々と望む事はある。
お前には誰よりも俺を頼りにして欲しいし、
お前が困った時は、俺に相談して欲しい。
お前の一番の親友でありたいし、
切磋琢磨するライバルでもありたい。

…そして、何より。
お前には、俺だけを見ていて欲しい。

だが。
俺がお前を縛り付ける謂れはない。
それが分かって居るから、
俺は、自分の願望を押し殺す。

お前が俺の隣に居てくれる。
今の俺には、それでいい。
そう、自分に嘘を吐く。

そして、お前の隣で。
俺は今日も、事も無げに微笑むんだ。

4/3/2024, 2:22:43 PM

1つだけ


子供の頃、皆と星空を眺めた事がありました。
何時もなら、疾うに眠りについている時刻。
今日は特別だよ、と言われ、
外に出て、空を見上げました。

頭上には、満点の星。
今迄見た事の無い数の星が瞬いていました。
空に散りばめられた数多の星の美しさに、
私は少しだけ怖くなりました。
そんな闇夜に煌く星々の中で、
一際、輝く星がありました。
いつの間にか、その1つの星に、
私の心は、釘付けになりました。

…私にとっては『1つだけの星』。
部屋に戻っても。ベッドに潜り込んでも、
翌朝になっても。何日も経っても。
その『1つだけの星』は、
私の脳裏から消える事はありませんでした。

あの日から。
何れ程の月日が流れた事でしょうか。
私は、大人になり、忙しい日常に追われ、
夜空を見上げる余裕なんて、
すっかり無くなっていました。

日々に疲れ果て、久しぶりに見上げた星空。
でも、
どんなに星空の中を探しても、
キラキラと眩い星は沢山あるのに、
あの『1つだけの星』は、ありませんでした。

それでも。
私の心の中には、
あの幼い日に見付けた『1つだけの星』が、
輝いているのです。
それは、貴方との思い出であり、
貴方の面影であり、貴方の存在そのものです。

そう。
私の希望の星は…1つだけ。
見上げた星空に、『1つだけの星』が見えなくても、
私の希望の星は、心の中に輝いています。

4/2/2024, 2:20:31 PM

大切なもの


失うという事は、何度経験しても、
簡単に乗り越えられるものでは無い。
失ったものが、大切であれば大切な程、
その強い喪失感に、苛まれ続ける。
そう。
大切なものを失う度に、
胸は切り裂かれる様に痛み、
心は哀しみに囚われ、失望の海に落とされる。

哀しみは、記憶の中に蓄積され、
決して癒える事はない。
こんなに苦しい想いをするのなら、
大切なものなんて、
作らなければ良かった、とさえ思うのだ。

だけど、私は。
君と出逢ってしまった。
絶望を力に変え、喪失感を知恵に変え、
哀しみを優しさに変える事の出来る。
そんな、君に。

君を見てはならない。
君に惹かれてはならない。
理性はそう警告するのだが、
それとは裏腹に、心は君を求めてしまう。

…私はもう。
大切なものは、二度と作らないと、
決めていた筈なんだが。


4/1/2024, 2:16:36 PM

エイプリルフール


貴方は信じてはくれないでしょうが、
ずっと以前から、
私は貴方に惹かれているのです。
出来るなら、貴方の隣に立ちたい。
貴方をずっと護りたい。貴方に私を見て欲しい。
そう、希っているのです。

ですが。
貴方に、私のこんな気持ちを告げた所で、
貴方にとっては、迷惑でしかない事は、
良く分かっています。
ですから、普段は。
貴方への恋慕は、心の奥底に仕舞い込み、
私は素知らぬ顔で、貴方と相対するのです。
…只の友人として。

それでも、やはり。
貴方への恋慕を、心の中に押し込め続けるのは、
余りに、苦しくて。
私は年に一度だけ、本当の気持ちを、
エイプリルフールの嘘という名目で、
言葉にして、貴方に告げるのです。

そして、また今年も。
私は、貴方が決して信じない、
エイプリルフールの嘘を吐きます。
…誰よりも、貴方を愛しています、と。

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