ルイ

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10/27/2023, 10:38:21 AM

お題:紅茶の香り

『至福のひととき』

高貴な香り
静かな部屋
かすかに聞こえる鳥の囀り

穏やかに流れる時の中で
ぺらぺらとページを進めてゆく
誰にも邪魔されることのない
私だけの世界

様々な情景の中に身を委ねて
静かに本を楽しむ時間
そのお供にはいつもの
甘い時を経て苦みを持つ
とっておきのその香りを

できることなら他でもない
私の愛するあなたから
私に注いでくれませんか
この至福のひとときが
さらに良いものとなるように

10/3/2023, 1:11:43 PM

お題:巡り会えたら

『想い出』

めでたしめでたしで終わる物語の
その先を知りたいと言う私に
人はやがて愛する人の思い出の中で
生きるようになるのだと
母はいつも言っていた

その言葉の意味なんて
幼い私は知らなかったけれど
ただ、ふぅんと聞いていて
その時がきて知る悲しみも
その時に気づく胸の痛みも
全部伝えられないのだと
遅すぎる程の後悔をした

いつか時が巡って
あの日々でまた会えるのなら
母が話してくれた物語の
その先を知りたいなんて言わないから
あの時の懐かしい思い出を
笑って語り合えるように
それまではただ静かに
想い出の中で会っていたい

9/16/2023, 9:09:57 AM

お題:君からのLINE
『奇跡』

書いては消してを繰り返し
連絡が無いトーク画を開いて
肩を落としてまた閉じる

連絡なんてしなくても
どこかで笑っていてくれるなら
それもいいのかな、なんて
笑えるほどには大人になったと思うけれど
やっぱりあなたからの連絡を待ってしまう私がいる

たった一言だけでいいから
元気だと教えてくれるだけでいいから
ほんの少しだけ私に
あなたの時間をくれませんか

ピロン、と聞きなれた音がなり
反射的に見た私の
この目が見たその奇跡が
これから先も続きますように

8/13/2023, 6:19:47 AM

お題:君の奏でる音楽
『同じ音』

君はとても口笛が上手
でも僕は上手く吹けなくて
同じ音が出せないと泣く僕に
君は笑って言った
「同じ音ならあるじゃない」
その意味を理解出来なかったけれど
僕はその言葉に救われた

君の奏でる音楽はとても綺麗で
僕はとても不格好
それでも隣にいられた日々は
いつもとても暖かかった
君はとても物知りで
クイズを出すのが好きな人

君がいなくなった日々を
生きれるかなんて不安で仕方なかったけれど
最後にあなたが出したクイズの答えを
僕はずっと抱えて生きていくだろう
君と過ごした思い出と共に

あの日のクイズを皆さんにも
「同じ音を奏でる、みんながひとつ持っているものってなーんだ?」
どこからか君の口笛が聞こえた気がした

お盆なので大切な人を大切に出来るようにこの詩を。

8/5/2023, 2:04:36 PM

お題:鐘の音
『時の報せ』

ゴーンゴーンゴーン
ああ、おやつの時間だね
お父さんがそう言って
子供たちが嬉々としてテーブルに着く
でもお母さんだけは
鐘の音を聞いて微笑んだ
鐘つきの少女は今日も生きている
その証が鐘の音だから

鐘つきの少女は今日も鐘をつく
初めは午前9時につき
次は正午きっかりに
そして午後の3時と午後の6時
最後の音は午後の9時
それは少女の生きている証
それが少女に課せられた義務

この街に生きる誰もが
時に困ることのないように
鐘の音で時を報せ
そして家族に無事を知らせる

【ある街に古くからある掟】
それはたった1つだけ
毎年その年の初めに生まれる少女
少女が10を迎えた日
少女には鐘つきの任務が与えられる
少女が鐘をつくのは10年間
20になれば返される
ただし、ひとつの例外が
文明が発展したならば
彼女は既に要らぬもの
文明が発展した時は
彼女も真に自由になるであろう

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