ルイ

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お題:鐘の音
『時の報せ』

ゴーンゴーンゴーン
ああ、おやつの時間だね
お父さんがそう言って
子供たちが嬉々としてテーブルに着く
でもお母さんだけは
鐘の音を聞いて微笑んだ
鐘つきの少女は今日も生きている
その証が鐘の音だから

鐘つきの少女は今日も鐘をつく
初めは午前9時につき
次は正午きっかりに
そして午後の3時と午後の6時
最後の音は午後の9時
それは少女の生きている証
それが少女に課せられた義務

この街に生きる誰もが
時に困ることのないように
鐘の音で時を報せ
そして家族に無事を知らせる

【ある街に古くからある掟】
それはたった1つだけ
毎年その年の初めに生まれる少女
少女が10を迎えた日
少女には鐘つきの任務が与えられる
少女が鐘をつくのは10年間
20になれば返される
ただし、ひとつの例外が
文明が発展したならば
彼女は既に要らぬもの
文明が発展した時は
彼女も真に自由になるであろう

8/5/2023, 2:04:36 PM