お題:クリスタル
『透明だった僕らへ』
ただ澄んでいた
あの空のように
ただ待っていた
光輝く未来
未来なんて見えなくても
何とかなると思っていた
知らなかった僕らは
「社会」という怖さを
大人になった今
噛み合わない歯車の狭間
守りたいものはなんだ
自問自答を重ね
日々を繋ぐ
今の僕らから
過去の僕らのような君たちへ
光を見失わないよう
輝かんばかりの
言の葉という宝石を
輝いていたあの日も、今、抱える苦しみも、いつかは同じように輝く日々になると信じたい。
お題:まだ見ぬ世界へ!
『明日へ』
街が眠る時間
静かに静寂を抜け出す
どこからか聞こえてくる
いつもなら騒がしいそれも
今はひとりじゃないと思える
向かうのはあの場所
約束を破ってしまわないように
心が折れそうな時はいつも
ここに来る
月が海面を照らす
ここに来れば落ち着ける気がする
寄せては返す波がまるで
あなたのようだと思う
ねぇもう少しだけ頑張ってみるよ
先は見えないけれど
この世界を信じて
明日を迎えてみたいから
お題:最後の声
『思い出』
今はいない
かつていたものの話
人はいつしか
己を取り巻くものを畏怖し
それらは姿を見せなくなった
それでも確かに存在していて
今もたまに声が聞こえる
かつては見えたその姿も
今ではとても朧気で
知らぬ振りをする人が増えるほど
我らは姿を無くしてゆく、とそれは言った
どれほどの時が過ぎたのか
かつては聞こえたそれらの声も
もう私には聞こえない
でも、確かに覚えている
最後にそれは私に言った
「笑え、そして生を楽しめ」
「たとえ我らがいなくとも、そなたは自分で歩けるのだから」
拝啓、桜守の君へ。という久夫夕貴さんが書かれた小説から着想を得たものです。
機会があれば、ぜひ読んでみてください!
お題:美しい
『蜜を持つ花を手折る』
ただ見惚れていた
その仕草に
洗練された所作であり
触れたら壊れそうな程に
脆い危うさを孕んでいる
「美しい」だけでは伝えられず
そっと手を引いて
社交場の喧騒の中を抜け出す
甘い香りを纏いながら
コロコロと笑うあなたを
秘密の場所へ連れ出そう
お題:どうしてこの世界は
あまりにも儚く
とても愛しい
過ぎるのは一瞬
願うのは永遠
どうか夜のままで…と願う声を
聞こえない振りで
朝は来る
ねぇ、朝が来るよ
また新しい日々が始まる
まだ夜の中にいてもいい
必ず見つけられるから
自分が輝ける場所を
どうしたってこの世界は
狂おしいほどに
「生きたい」という想いで溢れている
それがこの世に生を受けた
遥か昔からの運命(さだめ)なのだから