教えて 鏡の中の自分
なんで服屋さんの姿見って
家で見るよりも太って見えるのです??
「え? もしかしてA子?」
私は、突然目の前に現れた彼女の名を呼んだ。
彼女はA子。中学生の時の親友ーーだった。過去形なのは、好きな男子が被り、A子が抜け駆けして告白したことがきっかけで喧嘩したまま今まで会っていなかったからだ。連絡先も知らない。
だけど、それだって20年も前の話。
今の私には夫も子どももいる。今更A子と会っても、若干の居心地の悪さを感じつつも、それ以上に懐かしかしか湧いてこなかった。
だから笑顔を彼女に返すと、A子も嬉しそうに笑った。
私たちはカフェに入った。
A子がアイスコーヒーというので、店員さんを呼んでアイスコーヒーを二つ頼んだ。
耳が悪い店員さんだったのか、私の滑舌が悪かったのか、何度も注文を聞き返されたけど。
コーヒーを前にしながら、私たちは20年ぶりの再会を喜び、思い出話に花を咲かせた。
私が結婚してることを伝えると、A子はおめでとうと言ってくれた。そして、心の底から安堵したように大きく息を吐き出すと、私に向かって頭を下げた。
A子はずっと、私と喧嘩したことを後悔していたようだ。だからこうして謝りたかったのだと。それだけが、唯一の心残りだったのだと。
私は笑って首を横に振った。
もう気にしていないと。お互い若かったんだと、A子の謝罪を受け入れ、気にしないでほしいと言った。
そしてもし良かったら、これからまた会わないかと提案した。
するとA子は満面の笑みを浮かべながら、こう言った。
今は無理だけど、またいつかきっと会えるよ。その時はまた
--遊んでね?
ハッと気がつくと、私の前には誰もいなかった。ただ、氷が溶けてカサが増えたアイスコーヒーだけが、私の対面に置かれていた。
突然消えたA子。
呆然となっている私のスマホが鳴る。
A子と共通の友達、B子からだった。
「A子……亡くなったんだって。ずっと病気で……あなたに謝りたいって、ずっと言ってたの……」
涙声のB子の声を聞きながら、誰も飲まなかったアイスコーヒーを見ながら、全てに納得した。
A子。
眠りにつく前に、私に会いに来てくれたのね。
永遠なんて苦しいだけなのに
なぜみんな 欲しがるんだろう?
私の理想郷は何処だろう
探しても探しても見つからない
こっちだと思っても、こっちじゃない
あっちだと思っても、あっちじゃない
そして、今日も見つからなかったと文句を言って
いつもの場所に戻る
あれ?
もしかすると
この場所が私の--
またピラティスに通い出した。
コロナが流行る前だから、もう4、5年ぐらいだろうか。
月に2回、通った道が懐かしい。
まだまだ子どもが小さくて、母と行った。
プライベートレッスンだったから、子連れでも良いスタジオだった。
当時、腰痛が酷かった私のために、母がピラティスを勧め、さらにレッスンの間の子守りをしてくれていたのた。
私が必死になって体を痛めつけている間、子どもたちは母と遊んでいた。だからゆっくりとレッスンを受けることができた。
だけど、小さかった子どもたちももう大きくなり、仕事帰りに、一人でピラティスに通うこともできるようになった。
早いものだ。
母と子供達と歩いた道を、一人で歩く。
子どもたちの成長と、もう二度と母と一緒に歩けない寂しさを、懐かしい記憶の中で噛み締めながら。