高校生の頃は髪が命だった…
朝シャンが日課で、セット道具と言えば
当時では最先端のクルクルドライヤー
「それくらい必死に勉強すればね…」と
やや…いや…かなり呆れ顔の母の小言…
とにもかくにもバッチリ仕上げないと1日の気分に関わる!それが女子高生だ!
食べる事も諦めて、朝ご飯は抜き…
2時間目が終わった頃に売店にフルーツ
ゼリーを買いにいくのがルーティーンだ。
早朝から全力で仕上げた髪を鏡で確認し
「よし!完璧だな…」
ギリギリで完成させて駅に向うべく
自転車を立ち漕ぎする。
…ポツリ…ポツリ…ポツリ…
「嫌ぁ〜!!」曇り空から憎っくき雨…
「今日は晴れるって言ってたよね〜」と
同級生に無駄な確認を取る…
湿度と小雨の攻撃はいとも簡単に私の
力作をぐちゃぐちゃに壊していく
「梅雨」なんて大嫌いだぁ〜!
うつむき加減に憂鬱な気分で1日の
学校生活を過ごしながら、ふと母の小言を思い出す…
「それくらい必死に勉強すればね…」
ハイハイ…お母様のおっしゃる通りです(笑)
「無垢」と言うならば生まれてから
まだ日が浅い赤ちゃんたち…
清らかでまっすぐで汚れなき彼らには
私たち大人が見えない世界から
時々ベビーシッターが来るらしい…
私は、何度かそんな出来事に遭遇した
もちろん私には見えるはずもないが
それは、誰も居ない空間に突然現れる。
天井付近だったり部屋の片隅だったり…
やっと見えるようになったつぶらな瞳で
前後左右と何かを追っている…
そして、声を出して楽しそうに笑う
………不気味だ(笑)
けれど、何だかとっても幸せそうに笑う
ので、大人たちも真剣に来客を探り出す
「じいちゃんか?」「ばあちゃんか?」
いったい誰が来てるんだ?
けど確かにしっかりあやしている…
純粋無垢な彼らには、澄み切った眼差しでハッキリと見えているのだろうか…
駆け引きをしながら生きる大人たちの
曇った目にはもう何も映らないって事か
まあ、見えたら見えたで身内でも震える(笑)
美容師になろうと決めたのは9歳…
親戚に美容師が数人いたこともあり
身近に綺麗になっていく姿を目にしていた
何より、幸せそうな笑顔が幼心にも印象的で「良いなぁ〜私も髪切りたいなぁ」
そんな風に思ってその道に進んだ…
実際、手に職をつけるとはイバラの道で…
技術だけではなく、人間関係もかなり厳しくトイレに隠れて泣いた…
あれから長い長い時間が過ぎた…美容師として人として沢山の事を学んだ。
「髪を切る」それだけが仕事ではない。
土台はやはり信頼関係に尽きる…
数十年一緒に年齢を重ねてきたお客様…
時には、カウンセラーになり友人になり
安心して過ごす特別な時間…
心の内を話す事で、髪の毛と一緒に気持ちも軽くなり、わずかな時間で顔つきまで変わるのを見て自分の選択は間違ってなかったと実感出来る…
個々に幸せな気分を満喫し、笑顔で帰って頂く事で私も幸せのオーラを頂いている。
1つの事を突き詰めると、全ての職業に共通する「終わりなき旅」は私が美容師として生きていく限り永遠に続く…
愛犬を見送って5年…
当時、私が悔いた出来事がある。
深夜2時、愛犬を抱きソファで居たのだが
その数時間後に亡くなるとは思わず途中で
寝てしまった事だ…
先がわかれば朝まで抱きしめて、私の腕の中で送ってあげたかったのに叶わなかった…
「ごめんね」と、自分を責め続けた…
ほどなくして愛犬が夢に出て来てくれた。
元気でキラキラして幸せそうだった。
小さい頃、怪我をした鼻先の傷跡で愛犬
だとちゃんと目印までつけて現れた。
悔やむ私とは真逆に愛犬に悔いはない様だった…
生前と変わらず私に甘え、撫でてあげると
ちぎれんばかりに尻尾を振り元気一杯!
きっと私を励ましに来たのだろう…
「大丈夫だから!」そう感じたのだ。
私が悔やむと愛犬も悲しむ…だから気持ちを切り替えた…
2年間介護をした自分を褒めてあげたいと
そう思った。
今は「ごめんね」の言葉は私たちにはない
あるのはお互いに「ありがとう」だけだ…
19年…長生きして幸せを沢山くれて本当に
「ありがとう」感謝してる…
そして…生涯…貴方を愛してるよ。
「半袖」の思い出は…
小学校高学年の家庭科で作った夏服
初めて型を取り、裁断してミシンで縫って
仕上げた半袖の服は、淡いピンク色で
縦に青と白の模様が混じっていた。
小さな四角い襟が可愛くて白い花形のボタンが5つ…
不思議だなぁ〜…何でこんなにハッキリと
覚えているんだろう…
「半袖」と聞かれて溢れるように思いだした…きっと自分の力で作り上げた事がよほど嬉しかったんだろう。
今の私と言えば、しまむら、ユニクロ、GU
季節が変わればお手頃に買って、1〜2年で
処分…有難みなんて買ってからの数日だ…
物は溢れているが、気持ちは貧乏になったのかも知れない…
縫い目も歪んで下手っぴだった初めての
自作の半袖…
あの時の私はキラキラ目を輝かせて、
その夏服を繰り返し大切に身に付けていた…
もう一度、そんなワクワクした服に出会い長い時間大切に着る事が出来たら幸せだろうなぁ…