知ってる?このバレエ教室の噂話…
夜の9時になると、女の子がこの教室で1人踊っているんだって。月明かりに照らされて、黒髪が綺麗になびく姿が見られるんだってね…その女の子の姿をみた人は、どんなに下手な人でもたちまち上手になるらしいよ。
どんな見た目をしているか?
…そうだね、特徴的なのは肩まである綺麗な黒髪かな。それと、何回も練習したのが分かる足。…今思い出すだけでも心臓がドキンッとするほど綺麗な人だったよ。
そう、あなたみたいな…
私、あなたに憧れてバレエを始めたの。始めて少ししか経っていない私に主役を取られて一生懸命練習するあなたが愛おしく思えたの。
だからさ、これからも光り輝いて暗闇の中で。
あなたの輝きは私だけが知っていればいいからさ。
放課後いつもの場所にいる君
たくさんの本を読む君
本から匂うインクの匂いを上書きするぐらい柑橘類のいい匂いで周りを包む君
僕の素敵な想い人、酸素のように僕にとってなくてはならない人…
早く僕に気づいて、僕を必要として。
あなたにとってなくてはならない酸素のような存在に僕はなりたいんだ。
太陽の光を反射して宝石のように輝く海、鼻にツンとくる磯の香り。私は、その全てが大嫌いだ。
あれは、私が小学生の頃。
友達と海に来ていた私は、足を滑らして波にさらわれていった…
この季節になると、毎年友達がここにきて悲しい顔をする。
そんな、顔をしないで。私は、ここにいるよ。
私の声は届かない…
だから、私は海が大嫌いだ。私の記憶の海は、友達を悲しませるものしかないから。だから、大嫌いなんだ…
高得点とテスト用紙、5が多くついた成績表
僕は、今までずっといい子にしてきた。
みんなが僕を褒めてくれた。
(頑張ったね)
(凄いね)
でも、僕が欲しかった人からは一度もその言葉を聞いたことはない…ねぇ、お母さん。
僕は、ただ貴方だけに褒めて欲しかった。頑張ったねと、頭を撫でて欲しかった。
ねぇ、お母さん。
(早く目を覚ましてよ…)
僕は今日も、病室で目を覚まさない母に向かって話をする。いつか、褒めてくれるその日まで…
中学3年生の冬、俺は家出をした。
きっかけは些細なものだった、受験勉強で気が立ってたんだ。
(俺だって頑張ってるのに、あんな事言われたら…)
(少し言い過ぎたかな)
そんなことを考えながら歩いて気がつけば、港まで来ていた。
既に太陽は海に沈んでいて、街灯の光を反射させた海が宝石のように綺麗に見えた。
そんな海に見惚れていたら、ある一艇のボートから声をかけられた。
すごく気さくで、明るく、元気なじいさんだった。
じいさんは、遅くに港を出歩いてることについては何も触れず、ただ自分の夢を話していた。
(いつか大きな船に乗って魚をじゃんじゃん釣るんだ!)
じいさんの姿はみすぼらしく、その話は夢のまま実現することがなさそうだ。とも思ったけど、俺はその夢物語に背中を押してもらった。
俺は、今でもあの船は未来を運ぶためにこの港にやってきたのだと思っている。あの小さな一艇のボートが、俺には大きな船に見えたんだ。
(じいさん元気にしてるかな…)