中学3年生の冬、俺は家出をした。
きっかけは些細なものだった、受験勉強で気が立ってたんだ。
(俺だって頑張ってるのに、あんな事言われたら…)
(少し言い過ぎたかな)
そんなことを考えながら歩いて気がつけば、港まで来ていた。
既に太陽は海に沈んでいて、街灯の光を反射させた海が宝石のように綺麗に見えた。
そんな海に見惚れていたら、ある一艇のボートから声をかけられた。
すごく気さくで、明るく、元気なじいさんだった。
じいさんは、遅くに港を出歩いてることについては何も触れず、ただ自分の夢を話していた。
(いつか大きな船に乗って魚をじゃんじゃん釣るんだ!)
じいさんの姿はみすぼらしく、その話は夢のまま実現することがなさそうだ。とも思ったけど、俺はその夢物語に背中を押してもらった。
俺は、今でもあの船は未来を運ぶためにこの港にやってきたのだと思っている。あの小さな一艇のボートが、俺には大きな船に見えたんだ。
(じいさん元気にしてるかな…)
5/11/2025, 10:50:50 AM